有価証券報告書の“統合報告書化”は進むか

昨日(2025年9月16日)の日経平均株価は一時初の4万5000円台を付けたが、PBRが1倍を切っている企業はいまだ相当数に上るものと見られる。日本企業の企業価値が低く評価されている一因として、 情報開示媒体(有価証券報告書、事業報告、計算書類、コーポレート・ガバナンス報告書、統合報告書など)が多すぎて投資家が企業の実態を把握しづらいとの指摘がある。こうした問題意識の下、経済産業省が2024年6月に公表した「企業情報開示のあり方に関する懇談会-課題と今後の方向性(中間報告)」では、今後数十年を見据え、法定開示と任意開示の情報開示体系の方向性について、下表のとおり2つの「イメージの案」が示されたところだ。


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。

法定or任意 イメージ案1 イメージ案2
法定開示 ・「過去の財務情報」が中心
・有報、事業報告、計算書類、CG報告書などを一体化
「一体化」+「価値創造プロセス、ビジネスモデル、トップメッセージなども含めた統合的報告」
任意開示 価値創造ストーリーや将来戦略といった「未来志向の情報」 法定開示書類の要約・詳細データ集として位置付け、法定開示書類を補完

イメージ案1は、法定開示書類を一体化して「過去情報」に特化した新たな法定開示書類を創設しつつ、「未来志向の情報」は任意開示に任せるというもの。両者の役割を明確に分けることで、情報の混乱を避ける狙いがある。一方、イメージ案2は、現行の統合報告書で開示されている情報も法定開示書類に含め、任意開示書類はそれを補完するものと位置付けている。

企業情報開示のあり方に関する懇談会で支持が多かったのはイメージ案2の方だ。ただ、決算後3か月以内という現行の有報の提出期限の中で開示内容が大幅に増えることに対しては、企業の負担増加を懸念する声もある。

ところが、最近の有価証券報告書を調査すると、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから