野村総合研究所金融イノベーション研究部 三井 千絵
ここ数年、「有報(有価証券報告書)の総会(定時株主総会)前開示」というフレーズが繰り返し使われ、2026年4月10日にパブリックコメントに付されたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂案にも盛り込まれている(序文(4ページ)、原則1-2(株主総会における権利行使)参照)。しかし、筆者は、このフレーズが有報簡素化議論の伏線にされかねないことに、強い危機感を抱いている。
総会の開催と有報の開示のタイミングは古くから問題視されてきた。2015年のCGコード導入後にはACGAや国内機関投資家からもこの問題を指摘する声が上がっていたが、金融庁が腰を上げたのは、2024年4月に岸田首相(当時)が「有報の総会前開示に向けて、金融庁で検討を進める」との方針を示した後だった。そして議論は、株主総会を後ろに倒すのではなく、有報の開示前倒しへと向かった。
ACGA : The Asian Corporate Governance Association(アジア・コーポレート・ガバナンス協会)の略で、アジア市場に投資するグローバルな機関投資家の団体である。香港に拠点を置く。
文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム
しかし、有報の開示を前倒しすることには無理がある。・・・
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