フィデューシャリーアドバイザーズ代表
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 吉村一男
上場企業の経営者から「日本の買収ルールはよく分からない」という声をしばしば耳にする。それもそのはず、日本の企業買収法は一見すると米国法に似ているように見えるが、「効果」という観点からは英国法に近いからだ。最新の議論を踏まえ、日本の企業買収法のあり方を考えてみよう。
米国の企業買収法では、「取締役会」は買収者と株主の間の取引に介入する十分な裁量権を有しており、取締役会の決定は裁判所によって“事後的”に審査される。一方、英国の企業買収法は、「株主総会」において別途承認されない限り、取締役会が買収提案を阻害する効果を持ついかなる対抗措置を講じることも禁止している(これを「ノー・フラストレーション・ルール」(対抗措置禁止の原則/買収阻害行為の禁止規定)という)。買収に関する紛争は、M&Aの専門家が集う「テイクオーバー・パネル」によってリアルタイムに解決される。
では、なぜ米国と英国のルールにはこのような違いがあるのだろうか。・・・
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