横塚 仁士 : 日本経済新聞社などで記者として活動した後、大和総研にてシンクタンク研究員として調査・研究に従事し、企業や社会課題の解決に関する知見を蓄積。その後はみずほ銀行、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどで、ガバナンス・リスク・コンプライアンス(GRC)、クロスボーダーM&A、ESG・サステナビリティ、DXなど幅広いテーマで企業を支援。農業系ベンチャー企業では新規事業開発や地方創生案件を担当。2025年6月、「100年続く仕組みを創る」をビジョンに株式会社百年創造を設立。
サイバー攻撃は、いまや日本企業にとって現実的かつ深刻な経営上のリスクとなっている。2024年6月に発生した株式会社ドワンゴが運営する動画共有サービス「ニコニコ」に対するランサムウェア攻撃では、複数のサービスが長期間にわたり停止した(ドワンゴのリリースはこちら)。本件は単なるシステム障害にとどまらず、事業継続や顧客との信頼関係にも影響を及ぼしかねない事象となった。
ランサムウェア : システムへのアクセス等を制限する不正プログラムで、システムの利用者に制限解除のための身代金を要求することを目的とする。感染ルートとしては、メールの添付ファイルを不用意にクリックしてしまったケースや、改ざんされたサイトに誤ってアクセスし、意図せずしてプログラムをダウンロードしてしまったケースなどがある。
帝国データバンクが実施した「サイバー攻撃に関する実態調査(2025年)」 では、有効回答企業(10,645社)のうち 32.0% が「過去にサイバー攻撃を受けた経験がある」としており、規模、業種、地域を問わず日本企業の多くがサイバー攻撃に直面している現状が明らかになっている。
これらの事実は、サイバーセキュリティがもはや「情報システム部門に任せるべき課題」ではなく、取締役会レベルで議論すべき経営上の重要課題になりつつあることを示している。
サイバーセキュリティ : サイバーセキュリティに関する国際規格であるISO/IEC 27032:2012によると、サイバー空間における資産の機密性(Confidentiality)・完全性(Integrity)・可用性(Availability)(略してCIA)を確保するための保護活動とされる。
企業におけるサイバーリスクの高まりを受け、政府はガイドラインや調査報告を相次いで発表し、企業に対応を促している。・・・
サイバーリスク : サイバー攻撃、システム障害等に起因して、情報資産の喪失、サービス停止、金銭的損失、信用失墜等をもたらす可能性のこと。
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