ソフト99の事案で顕在化 長期投資家に報いることができなかった場合のリスク

カーケア製品大手のソフト99コーポレーション(東証スタンダード)は2025年11月14日、創業家(堯アセットマネジメント)によるMBO(マネジメント・バイアウト)が不成立となる一方、シンガポールに拠点を置くアクティビストであるエフィッシモ・キャピタル・マネージメントによる対抗TOB(公開買付け)が成立したことにより、主要株主に異同が生じたことを発表した。従来の筆頭株主は創業家の資産管理会社であるサントレード(持株比率:15.03%)だったが、エフィッシモがサントレードに代わって筆頭株主となる(同:36.14%)。ソフト99は今度の見通しとして、エフィッシモが全株式の買付けを目指したTOBを再度実施する可能性があること、それが実現した場合には上場廃止となることに言及している(ソフト99コーポレーションのリリースはこちら)。

本事案は、創業家によるPBR1倍割れのTOB価格(後に引き上げ)でのMBOが、これを大きく上回る価格によるアクティビストの対抗TOBによって阻止されたケースである。キャスティングボートを握ったのが、12.4%を保有していたカーコーティング大手のKeePer技研(東証プライム)だ。KeePer技研は一旦は堯アセットによるTOBに応じる旨の契約を締結したが、一転してエフィッシモによる対抗TOBに賛同したことがMBOの成立を阻む決定打となった。一連の経緯は下表のとおり。


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。

2025年3月 KeePer技研が大量保有報告書を提出(12.4%)
22025年8月 ソフト99が、田中社長の設立した堯アセットによるTOBの実施を発表(1株2,465円)
2025年9月 KeePer技研が堯アセットとの間で、TOBに応募する旨の契約を締結
エフィッシモが1株4,100円による対抗TOBを発表
22025年10月 堯アセットがTOB価格を2,680円に引き上げ
KeePer技研がエフィッシモのTOBに応募すると発表
22025年11月 堯アセットによるTOBが不成立となる一方、エフィッシモによる対抗TOBが成立。エフィッシモは約36%を保有する筆頭株主となる。

KeePer技研は国内ファンドであるシンプレクス・アセット・マネジメントが保有していたソフト99株式を大量取得、これが・・・

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