MBOや完全子会社化における「積極的なマーケット・チェック」の有用性

MBO(経営陣による買収)や支配株主による完全子会社化を巡っては、取引条件の妥当性のみならず、「手続の公正性」が重要な論点となる。こうした中、注目されているのが、積極的なマーケット・チェック(対抗的な買収提案の機会の確保)だ。

2025年8月4日のニュース「東証、企業再編の利益相反対応を強化 MBO等の手続が厳格に」でお伝えしたとおり、東京証券取引所はMBOや支配株主による完全子会社化に関する有価証券上場規程等を一部改正し、2025年7月22日に施行している(改正内容は2025年4月14日に公表。「MBOや支配株主による完全子会社化等に関する上場制度の⾒直しについて」参照)。改正のポイントは、①従来は支配株主が議決権を有する上場子会社を完全子会社化する取引に限って課されていた特別委員会の意見取得義務が、MBOを含む完全子会社化全般(以下、MBO等)に拡大、②株式価値算定の重要な前提条件(財務予測や割引率、算定機関との関係など)に関する開示を拡充、の2点である。


特別委員会 : 企業買収の公正性の確保を目的として設置される独立した合議体。企業価値の向上と一般株主の利益保護のため、企業買収の是非や取引条件の妥当性、公正性を検討・判断する。

①の改正により、取締役会にはMBO等についても特別委員会の意見を取得することが義務付けられたことを受け、特別委員会は、対象会社および一般株主の利益を図る立場に立ち、「取引条件の公正性」および「手続の公正性」の観点から、MBO等の是非について説明する役割を担うこととなった。

「取引条件の公正性」については、②で求められている株式価値算定の前提条件に関する開示内容が重要な判断材料となる。また、「手続の公正性」を担保する措置としては「マーケット・チェック」が重視されている。

経済産業省の「公正なM&Aの在り方に関する指針」(以下M&A指針)では、「マーケット・チェック」を「M&Aにおいて他の潜在的な買収者による対抗的な買収提案が行われる機会を確保すること」と定義している。そのうえで、マーケット・チェックの実施方法として、下表のとおり「積極的なマーケット・チェック」と「間接的なマーケット・チェック」の2つを挙げている。

積極的なマーケット・チェック 市場における潜在的な買収者の有無を調査・検討する
間接的なマーケット・チェック M&Aに関する事実を公表し、公表後に他の潜在的な買収者が対抗提案を行うことが可能な環境を構築した上でM&A実施する

M&A指針では、「積極的」「間接的」いずれのマーケット・チェックを実施するかは取締役会や特別委員会が判断するとしつつも、・・・

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