役員人材バンク-インタビュー記事2-

業界を超えたキャリアチェンジが増えている

―――海外事業以外の人材のニーズはいかがでしょうか?

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森本 今どの会社も非常に注力されているのが管理職以上の女性の採用です。政府は2020年までに女性管理職比率を30%以上に引き上げ、全上場企業が女性役員を登用するよう呼びかけていますが、こうした政府の方針とは関係なく、女性を登用することで企業イメージの向上、ブランディングにつながると考える企業が非常に増えています。ただ、社内から女性役員を登用しようとしても、海外事業を担える人材同様、今まで育成してきていませんので、やはり候補者は多くありません。確かに大手企業は男女雇用機会均等法以来、女性総合職を採用してきた事実もあるのですが、必ずしも「管理職」や「役員候補」としての幹部教育はしてきていないのが実状です。こうした中、コンサルティングファーム出身で経営全般が分かる人、外資系企業などでスペシャリティのある職種、例えばCFO、HR、マーケティング、広報のトップなどの経験を積んだ女性などのニーズは高いですね。このあたりの領域は日系企業でも女性のトップがいるケースが少なくないように、「受け入れやすい」ということが背景にあります。
 女性以外ですと、メーカー出身者に対してSPA(製造小売業) などの事業者からのニーズが非常に高まっています。多くの小売業者がプライベートブランド(PB)の比率を上げようとしていますが、その場合、メーカーとの交渉や品質管理、物流など、“メーカーの論理”が分かっている人が必要になります。そこで、例えばメーカーの工場長が小売業者の役員に就任するようなケースが出てきています。また、近年はM&Aに積極的な企業が増えていますので、証券会社、ファンドなどで経験を積んだ投資銀行系の人材もニーズがありますね。このほか、従来から見られる銀行から事業会社のファイナンスや戦略財務担当役員、コンサルティングファームから事業会社の経営企画担当役員というパターンは引き続きあります。

―――業界を変わられる方も多いのでしょうか?

森本 そうですね。業界を超えたキャリアチェンジが増えています。そもそも経営層まで行くと、あまり業界は関係ありません。要するに「経営」が分かればよいという話ですので。それに、「業界」というものにあまりこだわるべきではないと思います。合併などの再編もあり得ますし、昨日まで繁栄していた業界が、ある技術や何かイノベーティブなことが起こってあっという間に陳腐化するということは当たり前のように起こる時代ですので、「この業界で生きていく」というようなキャリアビジョンはあまり持たずに、職種とか働き方で会社を選ぶべきでしょうね。実際、企業の方も、全く違う業界の出身者であっても、例えばクライアントのお客様の属性が近いとか、何かしら親和性のある接点さえ見つけられれば、「うちの業界を知らないからダメだ」とは言わなくなってきています。むしろ、全く違う業界の出身者から、新しい、何かあっと驚くようなプロダクトだったりサービスが生まれる方を期待しています。

入社後に昇進するケースも

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―――エグゼクティブの転職では、ポジションや会社の規模は変わることが多いのでしょうか?

森本 会社のサイズを少し落として、ポジションを上げることが多いですね。例えば、社員数万人の企業で部長を務めていた方が、数千人、数百人の企業で執行役員や取締役に就任するようなケースです。
 逆に、規模の小さい企業がら大きい企業に移る場合もあります。この場合、子会社や海外の現地法人の社長として迎えたり、M&Aした会社にPMIとして入ってもらうパターンがよく見られますね。

―――入社してから昇進するケースもあるのでしょうか?

森本 はい、あります。他の会社で部長やっていた方をまず執行役員として迎え、パフォーマンスを見てから取締役に上げるようなケースです。女性幹部を採用する場合もこのパターンが多いですね。いきなりプレッシャーの大きい組織マネジメントは避け、管掌役員付きの執行役員などとして入社して、最初は管掌役員のブレインとして動いてもらうわけです。

―――マザーズ、ジャスダックなどの新興上場企業における役員の採用状況はいかがでしょうか?

森本 新興上場企業の場合、社内で人材を育てる時間やリソースがないことが多いので、事業を加速度的に成長させるためにも、外部から役員を持ってくるというのは以前からある話です。基本的には、創業メンバーの“不得意領域”を外部の人材で補うというイメージです。例えば創業メンバーがIT系人材ばかりであれば営業系の役員、営業系人材ばかりであれば管理系、事業開発系の役員を採るというパターンです。また、会社が成長する過程では創業メンバーの一部が辞めてしまうことも少なくありませんので、そこを補充していくケースも多いですね。