東証第一部に上場しているCGC社(3月末決算)では、ちょうど今執行役員会が終わったばかりだ。終了予定時刻を大幅に過ぎてしまったため、出席者の多くは時計を気にしながら配布資料を手に足早に会議室を後にした。部屋に残ったのは、社内取締役の3人だけである。彼らは、1週間前に開催された取締役会で社外取締役からコーポレートガバナンス・コードへの対応策に本腰を入れて検討することを提案され(経緯についてはこちらを参照)、社長より指名を受け、たたき台を練ることを任された取締役A・B・Cの“3人組”だ。まずは、この1週間を使い、各自がコーポレートガバナンス・コード原案を読み込み、この場で疑問点を出し合うことになっている。
”3人組”は、まず、それぞれの疑問点を確かめ合うことにした。なかには誤解もあるようだが、じっくりと読み込み始めてから日が浅いのでそれも無理はない。
次のAからCの発言のうち、誰の発言がGOOD発言でしょうか?
取締役A:「コード原案をじっくり読むと「開示」と「説明」の違いが気になりました。「説明」は「開示」よりもトーンが弱いことから、「開示」と異なりコーポレート・ガバナンス報告書での記載は求められていないのではないでしょうか。」
取締役B:「それには気付きませんでした。私が気になった言い回しは「経営陣」と「経営陣幹部」の使い分けです。この2つはどう違うのでしょうか?」
取締役C:「「経営陣」と言えばボードメンバーを指すイメージがあるのですが、「経営陣幹部」なので、「経営陣」に加えて、「幹部」、すなわち執行役員や役職者も含む広い概念だと思います。
ところで、コード原案には、コードを「実施しない理由」の説明に際して「ひな型的な記述」を避けなければならないとあります。例のSTAP細胞の騒動以降、学生の論文が他の論文をコピペしているかどうかのチェックが厳格になったと聞いています。コーポレート・ガバナンス報告書におけるひな型的表現も、自分達の頭で考えていないという意味では、学生のコピペ論文と同じようなものです。上場会社がコーポレート・ガバナンス報告書でひな型的表現をした場合、どのようなペナルティが課されるのでしょうか?」
取締役B:「学生のコピペ論文には指導教官が厳しい対応をしているようですね。コードの場合、証券取引所が上場会社のコーポレート・ガバナンス報告書にひな型的表現がないかどうかを逐一チェックし、ひな型的表現をした会社に対して公表措置などのペナルティを課すのではないでしょうか?」
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。