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【役員会 Good&Bad発言集】開発費

 PPP社の経理担当A取締役は、今年から非連結子会社のSSS社の取締役も兼務することになった。現時点でSSS社はPPP社グループの連結開示上重要性がないことから非連結子会社と扱われているものの、将来的にはSSS社の重要性が増しPPP社の連結子会社になることも考えられる。それに備えて、今のうちからSSS社の会計処理を確認しておくことが、A取締役のミッションの一つである。

 SSS社の定例取締役会に出席していたA取締役が月次決算の資料に目を通していると、ふと貸借対照表の「開発費」という項目が目にとまった。

A取締役:「この開発費ですが、具体的にはどういったコストが集計されているのでしょうか。」

 他の取締役の視線はB取締役に注がれた。B取締役は、つい最近新設された開発部門を管掌する取締役だからだ。B取締役は、「開発費には新製品の開発に伴い試験的に購入した部材、テスト用の金型、開発部門の人件費や減価償却費等が集計されていること」「いまのところプロトタイプの手前の段階まで開発が成功していること」「この開発に成功すればSSS社の業績が飛躍的に伸びる可能性があること」「もちろん失敗する可能性もあるが、今開発を止めてしまっては、SSS社の業績はじり貧となってしまうこと」を熱心に語りだした。どうやらA取締役が開発の中止を提案するのではないかと勘違いしたようだ。B取締役の発言を受けてA取締役、続いてSSS社の経理担当取締役であるC取締役が発言した。

親会社の経理担当A取締役:「私は開発すること自体の是非を問題にしようとしているのではありません。会社の長期的な発展のためには新製品開発が不可欠であることは間違いありません。私が気になったのは、これは果たして資産に計上できるものなのかどうかということです。今のお話をお伺いしたところ、費用に落とすべきと考えますが、いかがでしょうか。」

非連結子会社の経理担当C取締役:「企業会計のルールでは、「繰延資産」という概念が認められています。これは一定の要件を満たす費用であれば、貸借対照表に計上して繰り越すことができるというものです。繰延資産には5つの項目だけが認められており、開発費もその1つです。そのことは財務諸表等規則36条からも明らかです。第一、成功するか失敗するかわからない費用を、開発の成否が分からない段階で売上に対応させて費用計上してしまうと、期間損益計算が歪められてしまいます。経理にお詳しいA取締役であれば、そのあたりのお話は当然ご存知かと思っていました。」

 上のA取締役とC取締役の発言のうち、どちらの発言がGOOD発言でしょうか?

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