サービス業を営むX社は、有期労働契約の嘱託社員を多数抱えている。そのX社の経営会議で、人事担当取締役が労働契約法への対応を話題にした。
「2013年4月に改正労働契約法が施行され、有期労契約に“5年ルール”が導入されたのは皆さんもご存知かと思います。5年ルールでは、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合には、労働者から申し込みがあれば、「期間の定めのない無期労働契約」に転換しなければなりません。今年(2016年)4月に改正法施行後3年を迎えるため、当社としても、そろそろ5年ルールへの対応方針を決めておく必要があります。」人事担当取締役のこの発言に対して、取締役A・B・Cが次のような発言をしました。取締役A・B・Cの発言のうち、誰の発言がgood発言でしょうか?
取締役A:「有期の嘱託社員は1年毎の契約更新なので、無期契約への転換が問題になるのは2018年4月のはずです。それまで猶予があるのだから、今慌てて方針を決定しなくてもよいのではないでしょうか。それに、人事担当取締役が言うように、無期労働契約はあくまで労働者の申込みがあって成立するものであり、通算期間が5年を超えただけで自動的に成立するものではありません。会社が前もって方針を決めておく必要はないと思います。」
取締役B:「いやいや、有期契約は必ずしも1年契約とは限らないのでは? また、今後2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて労働者不足がいっそう深刻になると言われていますし、早めに方針を決定して公表するなど先手を打っておけば、現在の有期嘱託社員の引き止めにもなるし、新たな労働力確保にもつながると思います。」
取締役C:「当社の対応としては、無期の正社員と同一条件での雇用に切り換えるか、通算5年を超えないように契約を終了させるしかないですね。前者はコストアップ要因になるし、後者は雇止めの問題がありそうです。」
雇止め : 有期労働契約の期間満了時に更新せず、契約を終了させること。
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