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【役員会 Good&Bad発言集】取締役会のセレモニー化

※今回の内容の一部は王将フードサービスの第三者委員会の調査報告書に記載されていた実話をベースにしています。

ABC社(東証第一部上場)の取締役会で、今回決議予定であった事項がすべて決議され、いよいよ報告事項に入ろうかというときに、取締役Aが動議を出した。

動議 : 取締役会の招集通知に記載されていない事項について、取締役会の場で緊急に決議を求めること

取締役A:「同業他社の大半が執行役員制度を導入しております。当社も乗り遅れると市場からの評価が下がってしまいかねません。定時総会まであと4か月しかないことから、急な話ではありますが、執行役員制度の導入について本日ご承認いただければと考えております。皆様の中には「何を唐突に」と思われる方がいらっしゃるかも知れませんが、本件はすでに会長と社長の了解を取っております。ご承認いただいた後にお手元の適時開示資料がそのまま開示される予定です。」

取締役B:「我が社のガバナンスの根幹にかかわる問題を、このような動議で提案するのは拙速すぎます。第一、取締役会での議論をおざなりにして一部の取締役による密室での議論だけで結論を出してよいわけがありません。これでは取締役会が単なるセレモニーになりかねません。」

他の取締役や監査役からも動議に対して批判的な意見が相次いだことから、結局、取締役Aは動議を取り下げる羽目になった。次は報告事項となり、まずは経理担当の取締役Cが報告を行った。

取締役C:「お手元の資料をご覧ください。わが社の経理規程では輸出売上の収益計上基準は『船積み基準』とされていますが、先月末に決算実施要領を改正し、例外的にX事業に限ってはFOB条件であっても工場出荷時に売上を計上できるよう『出荷基準』に変更しました。改正前と改正後の比較は表に記載のとおりでございます。」

取締役D:「収益の計上基準は、会社の売上計上のタイミングを規律する重要なルールです。会社の売上を左右する重要なルールを取締役会の議論を経ずに改正し、報告だけで済ませてしまうのは、問題があるのではないでしょうか。」

取締役E:「我が社のルールでは、“規程”の改正権限は取締役会にあるものの、“要領”は担当部長の権限で改正でき、改正後に取締役会に報告することになっています。取締役Cの発言は社内ルールに則ったものであり、手続きに何ら問題はありません。」

FOB条件 : Free on Boardの略。本船渡し条件とも言われる。コンテナ船や貨物飛行機に荷積みされた時点で、輸出品の所有権やリスクが売り主から買主に移転するという取引条件。

以上の取締役A~Eの発言のうち、誰の発言がGOOD発言でしょうか?

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