東証一部に上場している小売業の甲社(A事業とB事業を営んでいる)では、A事業は好調であるものの、B事業の売上が年々落ち込んでいる。このままでは2年前に定めた中期経営計画における目標利益の達成や配当方針の維持が困難であることから、B事業の売上回復に向け、さまざまな策を検討しているところである。そのような中、甲社の経営会議においてB事業の営業部長が「B事業の営業マンだけでなく、全従業員にそれぞれの売上目標を定めさせ、各従業員が持つ人的ネットワークをフル活用してB事業の売上に貢献することを求める」案を提案した。この施策は売上目標に実効性を持たせるため、「イントラネットで目標額と達成額を一覧にした表を掲示する」「達成額は人事考課に反映させる」といった方向性で検討が進んでいる。それを耳にした監査役が、甲社の定例取締役会で話題に取り上げ危惧を述べたところ、取締役A・B・Cが下記の発言をしました。誰の発言がGood発言でしょうか?
取締役A:「売上目標は“ノルマ”ではなく、あくまで各人の“目標”に過ぎないので、問題は生じないのではないでしょうか。このまま手をこまねいていては、A事業で稼いだ利益がすべてB事業の損失と相殺されてしまい、投資家に配当できなくなってしまいます。我々は、株主に対して株価向上と配当で報いるという上場企業の責務を果たさなければなりません。」
社外取締役B:「私は、この施策が全従業員に適用されるという点を評価しています。このような施策はとかく営業マンにだけ適用されがちですが、全従業員が売上に貢献することで会社としての一体感が醸成されると考えます。」
社外取締役C:「“売上目標”か “ノルマ”かは単なる言い回しの問題に過ぎません。従業員が“売上目標”を達成するよう強いプレッシャーにさらされ、目標未達の場合に人事考課が下がる可能性があるのであれば、それは“ノルマ”に他なりません。まして営業マン以外の従業員にも売上目標を課すのは不適切であり、自爆営業を招きかねません。このような施策にすがるようでは、B事業もそろそろ限界にきているのではないでしょうか?従業員に無理をさせてまで配当をひねり出す必要はありません。今こそ、B事業から撤退し、A事業に経営資源を集中するよう舵を切るべきです。」
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