決算期末を控えた某日、甲株式会社の代表取締役社長宛に、1通の手紙が届いた。秘書室長が開封、確認したところ、概ね以下の内容が記載されていた。
●自分は乙投資ファンドの代表者で、甲株式会社の議決権を約2%保有する大株主である。
●甲株式会社の株価は市場全体および同業他社と比べて著しく低い水準にあり、大いに問題意識を持っている。
●近年は目立った設備投資を実施していない一方で、貸借対照表には時価総額を上回る現預金が計上されている。
●その結果、黒字は確保しているもののROEは低く、また配当金も十分と言い難い。
●以上の実態について、社長と直接面談したうえで意見をうかがいたい。その機会を持てないならば、株主総会で詰問する。
秘書室長は仰天して総務担当取締役に報告、急遽、臨時取締役会が招集された。当日は海外出張中の営業担当取締役を除いた、すべての取締役および監査役が出席している。
総務担当取締役「・・・・以上が乙投資ファンドによる手紙の内容です。なお同ファンドは前期末の株主名簿において、既に0.5%の株主として名義が記載されており、今期になって株を買い増した模様です。したがって株主提案権(*)も保持しているものと思われます。」
社長「それでは仮に面談の要求を無視すれば、今度の株主総会で騒がれるだけでなく、株主提案を実施されて委任状争奪戦になるかもしれないのか。私自身は会っても構わないのだが、その必要はあるのか?」
法務担当取締役「お待ちください。経営トップが1株主に会う義務など、会社法には規定されておりません。乙ファンドは所詮、少数株主であって、その面談に応じたとなると、他の株主にも会わなければ、株主平等原則の観点から問題になるかも知れなせん。」
広報IR担当取締役「しかし無視するのもいかがかと。弊社は近年、外国人はじめ機関投資家の株主が増えており、株主提案になれば賛同する株主も少なくないでしょう。そうなると『揉めている会社』として、レピュテーションに関わる恐れがあります。」
各取締役はそれぞれの立場から意見を言い、社長も迷っているようだ。そして社長は「君はどう思うかね」と、あなた(業務執行取締役)を指名して発言を促した。
次のAからCの発言のうち、どの発言がGOOD発言でしょうか?
発言A:「投資ファンドなどというものは『金』だけがすべてで、実際にビジネスを遂行している我々とは相容れない存在です。こんな手紙は無視して、顧問弁護士の指示に従って株主総会を乗り切るべきでしょう。」
発言B:「株式会社はあくまでも『株主のもの』であって、その求めに応じることは、法律に定められていなくても、経営トップとして当然の責務です。まずは直接お会いした方がいいでしょう。」
発言C:「相手のことも詳しく知りませんし、まずは広報IR担当取締役がお会いするというのはいかがですか? その際に言われたことを持ち帰って再度、臨時取締役会を開催するのがよいかも知れません。」
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。