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【役員会 Good&Bad発言集】未払残業代

 PPP社(東証第一部上場)はメインフレーム用のアプリケーション開発を業務の柱としている。同社は、3年前にモバイルアプリケーションの開発会社であるSSS社を買収した。そのSSS社において「未払残業代」が多額にのぼることを、PPP社の内部監査チームが発見した。

 同社の取締役会では、開催日の3日前までには、取締役・監査役に事前に資料が送付されるのが通常だが、今回は内部監査室のレポートの仕上がりがぎりぎりになったため、取締役会の場で初めて資料が提供されることになった。

 取締役会の席上、数十ページに及ぶ分厚い報告書が配られ、冒頭のエグゼクティブサマリーに目を通した役員達の顔色が変わった。なんと、残業代未払額は創業時(7年前)から累積すると1億円を超えることが判明したからだ。

社長「参ったな。SSS社でこんな違法状態が野放しだったとは。なぜ、買収時に発覚しなかったのだ。」

経営企画担当取締役「買収は私が入社する前の話なので、当時の経緯はよく分かりませんが、買収当時、SSS社は経営危機の状態であったと聞いています。我が社は同社をタダ同然で買収できたことから、デューデリがおざなりなものになっていたのではないでしょうか。すみません、何しろ入社前のことなので、私自身もよく分からないところではあるのですが。」

経営企画担当取締役は、早くも逃げ腰だ。

社長「タダ同然といっても、未払残業代などという“隠れ債務”付きのものを買ってしまっては、どうしようもないだろう。」

モバイルアプリ担当取締役「ご存じの通り、SSS社は買収後の当社の支援により随分と経営を立て直したのですが、そうはいっても、現在の財務状況は未払残業代の支払いに耐えられるレベルではありません。」

社長「うーん、困ったな。みんなの知恵を貸してくれないか。」

 この後、他の取締役がそれぞれ自案を述べていきました。次のAからDの発言のうち、誰の発言がGOOD発言でしょうか?

取締役A:「実際にSSS社の従業員から未払残業代の支払いを請求されたわけではありませんよね。請求されるまで、こちらから積極的に支払う理由はないと思います。」

取締役B:「残業代未払額は創業時(7年前)から累積すると1億円ですが、労働債権の時効を考えると、実際に支払いが必要となる額はそこまではいかないはずです。」

取締役C:「そもそもSSS社は年俸制を採用しています。年俸制だから残業代は発生しないはずです。」

取締役D:「これを機に、残業代を支払う必要のない裁量労働制を採用すべきではないでしょうか。」

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