4月中旬のある日、ABC電機株式会社では前3月期の決算概要速報の報告と決算検討事項に関する議題が取締役会に上程されていた。ABC電機は中堅の電機メーカーであり、東証一部上場企業である。しかし、昨今のグローバル化の波に乗り遅れたため業績は青色吐息で、一部上場企業の中では規模、時価総額ともに小粒と言ってよい。ABC電機では毎月10日前後に定例の取締役会を開催している。今日は定例の取締役会の日。普段は会社にいない非常勤の社外取締役や社外監査役も全員出席しており、常勤の取締役・監査役はやや緊張した様子だ。
経理担当取締役「それでは、続いて決算検討事項として国内工場の減損損失の計上について審議させていただきます。・・・・・(中略)・・・・。この点、会計ルールでは・・・・(中略)・・・・。以上の結果、減損損失を特別損失の部に計上することにより、今期の税引前利益は○○億円の赤字となる見込みです・・・・なお、会計士の先生もこの処理に同意しています。」
社長「ちょっと待ってくれ。減損だかなんだか知らないが、そんなに多額の損失を計上する必要はあるのか? 今期は、販売部門の地べたを這った営業と製造部門の血の滲むようなコスト削減で、なんとか営業利益を確保したのだぞ。それを『会計ルールだから』と言ってすべて無駄にするのか?そんな会計処理一つで、会社の業績が赤字に転落するというのは納得がいかない。」
社長が口火を切り、減損会計に関する喧々諤々の議論が続きます。ある程度、意見が出そろったところで、まだ発言していないあなたを社長が指名し、発言を促しました。次のAからCの発言のうち、どの発言がGOOD発言でしょうか?
発言A:「確かに減損対象となる工場で作っている製品の販売は、競合他社との価格競争で実績が予算を大幅未達になってしまいましたが、他の製品でうまくカバーして何とか利益を確保しました。それに、2年前に策定した中期事業計画では来期から黒字化できる予定ですので、将来キャッシュフローも十分に獲得できるはずです。」
発言B:「こんなに多額の損失を計上したら資金繰りはどうなるのですか? 先日すったもんだの末、ようやく銀行から借り入れた資金が、すべて減損損失に消えてしまうことになってしまいます。これでは、追加の借入が必要になるのではないですか?」
発言C:「今となっては、2年前に策定した中期事業計画の見込み自体が甘かったと言わざるを得ません。現に今期も予算未達だったのですよね。わが社を取り巻く外部環境は、この2年の間に随分と様変わりしました。それにもかかわらず、そのような甘い事業計画を盾に、減損損失を計上しないというのはいかがなものかと考えます。」
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