東証プライム市場に上場しているP社では多角化により手を広げた事業の存続の是非が課題になっており、取締役会において先月(【役員会 Good&Bad発言集】事業ポートフォリオマネジメント(2)を参照)に引き続き事業ポートフォリオマネジメントについての議論が行われているところです。事業ポートフォリオマネジメントに関して次の3人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?
取締役A:「未来を見通すことは非常に困難なことです。実際、わが社の決算短信で開示している業績予想も、毎年のように修正を余儀なくされています。業績予想修正の最大の原因は、各事業部に出してもらう見通しの甘さにあります。事業ポートフォリオマネジメントにおいても、各事業部に出してもらう『成長性』は『希望』『願望』で歪められたデータになる可能性が高いのではないでしょうか。そのようなあやふやな指標を事業ポートフォリオマネジメントの評価軸に採用すべきではないと考えます。」
取締役B:「確かにその通りです。それに対して、資本収益性は事実に基づいた指標なので信頼できます。事業ポートフォリオマネジメントは資本収益性だけで評価すればいいのではないでしょうか。」
取締役C:「『成長性』と言ってもすべてが将来の予測ではなく、過去の『売上高成長率』を時系列で並べることで将来の予測に利用することもできます。第一、『資本収益性』だけでは過去のことしか分かりません。『成長性』という将来の要素を取り込むことで、事業ポートフォリオマネジメントがより深化していきます。もし、各事業部が提出してきた『成長性』が信用できないというのであれば、エビデンスを求めて、継続的に検証していくしかないです。これは事業ポートフォリオマネジメントだけの問題ではなく、業績予想の信用性にもかかわってくる話です。信用できない数値をろくろく検証もせずに会社としての業績予想に使っているから、毎期修正を余儀なくされるのではないでしょうか。」
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。