数年前に新興企業向け市場に上場したPPP社は、関東を中心に食品スーパーを展開している。PPP社の取締役会では、東海地方で食品スーパーを展開しているLLL社の買収案件について、経営企画担当役員による報告が行われていた。
取締役経営企画部長「LLL社は大型スーパーの出店攻勢に伴い業績が悪化しております。また、LLL社の親会社も本業が芳しくないようです。そこで、LLL社の親会社が、当社にLLL社の買収を依頼してきました。経営企画部がLLL社の親会社との交渉やLLL社に対するデューデリジェンスを進めております。当社が手配した会計事務所によるLLL社に対する財務デューデリジェンスおよび株価算定の結果、同社の企業価値は60億円と算定されました。一方でLLL社の親会社は売却を急ぎたい様子で、現在のところ55億円で全株式を譲り受ける方向で交渉を進めております。『従業員・パートの誰1人として首を切らない』という条件ですが、それは買収後の経営の障害にはならないと考えています。この他に買収諸経費が発生しますが、買収により5億円弱の「負ののれん」が発生します。経営企画部としましては、未開拓である東海地方の商圏を一気に獲得できること、実質価額よりも割安な価額で買収できることに鑑み、今回の買収案件を積極的に進めたいと考えております。来月の取締役会では、具体的な買収契約の詳細について決議できるまでの状況に持って行ける見通しです。」
取締役経営企画部長の説明に対して、他の役員が次のような発言をしました。次のAからCの発言のうち、どの発言がGOOD発言でしょうか?
購買担当取締役A:「確か『のれん』は何年かかけて償却するのですよね。費用負担がしばらく続くことになるのが難点です。」
経理担当取締役B:「いえ、それは『正ののれん』の話です。『負ののれん』の場合、一括して特別利益に計上されます。経理部としては今回の案件に関わっていないのですが、会計事務所によるLLL社に対する財務デューデリジェンスや株価算定のレポートを拝見しますと、確かに買収しただけで5億円弱を特別利益に計上できることになります。すぐに話を進めるべきです。」
社外監査役C:「買収しただけで利益が出るというのは虫が良すぎる気がして、どうもしっくりこないのは私だけでしょうか。財務デューデリジェンスの結果は正しいのでしょうか? 何らかの含み損失を見落としている可能性はないですか? ところで買収価額は利益の何倍でしょうか? 買収に投下した資金は何年で回収する予定ですか?」
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