ガバナンス上の問題を抱えやすい役員退職慰労金
大手精密電子機器メーカーの元会長に13億円、大手総合家電メーカー退任取締役4名に対する総額18億円――――近年、株主総会が終了する毎年6月末付近になると、巨額の役員退職慰労金支給に関するメディアの報道が目に付きます。
2010年3月からスタートした新たな役員報酬の開示ルールにより、有価証券報告書では、従来からの役員報酬の総額の開示に加え、1億円以上の報酬を受け取る役員は、報酬金額の内訳(基本報酬、賞与、退職慰労金)を、氏名とともに開示しなければならなくなりました。
このように、「1億円以上」か否かの判定対象になる報酬には、基本報酬や賞与だけでなく、「役員退職慰労金」も含まれます。役員退職慰労金は本来毎期支払われるべき役員報酬を“後払い”しているに過ぎないため、これも判定対象の報酬に加えるのが合理的というわけです。
具体的には、会計上、役員退職慰労金の算定方法などについて定めた「役員退職慰労金規程」に基づき各期の発生額を見積もったうえで計上される「役員退職慰労引当金繰入額」に基本報酬や賞与を加えた金額をもって、「1億円以上」かどうかを判断することになります。また、会社への貢献度が高かったとして、役員の退職時に引当金計上額を大きく上回る額の役員退職慰労金の支給があった場合(後述する「功労加算金」などの支給があった場合)には、その上回った額は支給があった期に一括して費用化されますので、「1億円以上」という基準にひっかかりやすくなります。
役員退職慰労金は、従業員部分の退職金が精算された後、役員在任中に積み上がっていくことになります。一般的には、「退任時の報酬月額×役員在任期間×最終役位係数(代表取締役、専務取締役、取締役、監査役など、役職に応じて1.5~3倍程度の範囲で定められていることが多い)」によって算定され、さらに、特に会社への貢献度が高かった役員に対しては「功労加算金」などの名目の金額が付加されることもあります。「功績」「貢献」など主観的な要素にも左右される役員退職慰労金は、どうしてその金額になったのかが詳しく説明されないことも多く、コーポレート・ガバナンス上の問題を抱えやすいと言えるでしょう。
強まる役員退職慰労金の廃止トレンド
実は上場会社では、既に2000年初頭くらいから、役員退職慰労金を廃止し、後述する「株式報酬型ストックオプション」に切り替えるというトレンドがありました。現在では・・・
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