独立社外取締役の選任問題は今後も続く
周知のとおり、2015年5月1日から施行された改正会社法では「1人以上」の社外取締役の選任が義務付けられ、社外取締役を置かない場合には、「置くことが相当でない理由」を事業報告および株主総会参考書類に記載するとともに(会社法施行規則74条の2第2項、124条2項 *1)、株主総会での説明が求められています(会社法327条の2)。この改正会社法の施行に先立ち、東証は2014年2月に有価証券上場規程を改正(2014年2月10日施行)、上場会社に対し「独立取締役(=独立社外取締役。詳細は後述)」を少なくとも1名以上確保する“努力義務”を課しています(有価証券上場規程445条の4 *2)。
*2 独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役)の1名以上の確保が“義務”とされている(上場規程第436条の2)。
また、コーポレートガバナンス・コード(2015年6月1日~)では、独立社外取締役(詳細は下図参照)を2名以上置くべきとし(原則4-8)、これを遵守(コンプライ)しない場合にはその理由を説明(エクスプレイン)することを求めています(東証一部、二部上場企業のみ)。同様に、議決権行使助言会社最大手のISSの議決権行使助言基準でも、「複数の独立社外取締役」の選任が求められています。
会社法の改正以来、多くの上場会社が社外取締役を選任している中で、自社が社外取締役を置くことが相当でない理由を説得的に説明することは難しいため、今や「社外取締役が1人もいない」という上場会社はほとんどなくなりました。しかし、一部の上場会社では社外取締役が「独立社外取締役」でないほか、コーポレートガバナンス・コードやISSの議決権行使助言基準が求める「2名以上の独立社外取締役」を設置していないところは依然として少なくありません。
上場会社の大部分を占める監査役会設置会社においては2名以上の「社外監査役」の設置が義務付けられていますが、改正会社法により新設された新たな機関設計である「監査等委員会設置会社」に移行すれば、現在の社外監査役を「社外取締役」にスライドさせることが可能であるため、2名以上の社外取締役の確保に苦慮する監査役会設置会社の中には、監査等委員会設置会社に移行するところが続出しています(監査等委員会設置会社への移行についてはケーススタディ「監査等委員会設置会社に移行したい」参照)。
ただ、独立社外取締役を2名以上選任したとしても、いずれ改選の時期は来ますし、また、将来的には投資家サイドから「取締役会の過半数を独立社外取締役にすべき」といった声が高まり、独立社外取締役の増員を求められる可能性もあります。
したがって、(独立)社外取締役の選任問題は今後も上場会社にとって課題であり続けるでしょう。
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