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【ガバナンスのあり方】子会社に役員を送り込みたい

 

グループ経営における子会社管理の重要性

我が国では、財務報告における主役の座が単体財務諸表から連結財務諸表に代わってから、かなりの時間が経過し、その間に純粋持株会社制度や連結納税制度などが導入されたことに伴い、グループ経営や連結経営といった経営手法がずいぶん浸透したと言えます。そのような中、近時の経済不況とグローバル化により、個々の企業が自主性や独自性を保ちつつ、グループ経営によってグループ全体で人材や情報を有効活用することで競争力を高めることの重要性が再認識されています。

その一方で、グループ企業内で不祥事が発生すると、それがグループ全体の信用に影響することから、親会社だけでなくグループ全体でしっかりとした管理体制を構築することが必要です。会社法でも、大会社(資本金5億円または負債総額200億円以上の株式会社)である取締役会設置会社や指名委員会等設置会社には、取締役会が「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備(会社法362条4項6号)」を決定することが求められています。この「その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」には「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」(会社法施行規則100条1項5号)が含まれています。そのため、親会社の役員にとっては、自社の管理体制だけでなく、「企業集団」という視点から子会社の管理体制にまで気を配る必要があります。

この「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」ですが、次のようなことを決定する会社が多く見受けられます。

・ 子会社における業務の適正のための議決権行使の方針、親会社の監査役と子会社の監査役等の連携に関する仕組み
・ 親会社による不当な圧力に関する予防・対処方法、親子会社間の兼任役員の忠実義務に関する仕組み

もっとも、実際のところ、子会社は親会社と異なり、人員や予算が十分でないことから、子会社管理をどのように行うべきかについて頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。とりわけ、別法人となると情報が遮断されがちなので、情報の入手経路も考慮する必要があります。会計ソフトの統一により会計情報の定期的な入手は可能になっても、非会計情報の入手は別に手当てしなければなりません。そこで、多くの企業が活用しているのが、「子会社への役員送り込み」です。送り込まれた親会社の役員・従業員は、子会社の役員として親会社の方針を確実に伝達するとともに、子会社から非会計情報を含めた情報を親会社に吸い上げるための役割を期待されることになります。

そこで、ここでは親会社が子会社に役員・従業員を役員として送り込む場面にフォーカスし、その場合に生じうる問題点について、検討してみます。

子会社の取締役や監査役は誰が選ぶ?

100パーセント親子会社関係にあるような場合には、子会社の役員を誰にするのかを実質的に親会社(の経営陣)が決定し、子会社の取締役会はその方針に従った会社提案の議案を株主総会に上程することになるでしょう。

しかし、親子会社関係も様々ですので、中には親会社が独自に自ら役員候補を提案したいというケースもあることでしょう。この場合には、親会社は株主として株主提案をして役員候補を株主総会に上程することになります。具体的には、役員選任の議題が株主総会にかけられることが決定している場合には、株主総会の日の8週間前までに具体的な役員候補についての議案を提案し(会社法305条)、株主総会に役員選任の議題がかけられることが確定していない場合には、株主総会の日の8週間前までに役員の選任の議題と具体的な役員候補についての議案を提案することになります(会社法303条、305条)。さらには、実際には稀であるとは思われますが、株主総会当日に修正動議として具体的な役員候補についての議案の提案を行なうこともできます(会社法304条)。

以下に、役員候補の選任議案の記載例を挙げておきます。

(記載例)
第●号議案 取締役●名選任の件
 本総会終結時をもって取締役●名が任期満了となりますので、取締役●名の選任をお願いします。
 その候補者は、次のとおりであります。

候補者番号 氏名
(生年月日)
略歴、地位及び担当並びに他の法人等の代表状況 所有する株式数
●●株
●●株
子会社の役員との兼任、どれがOKでどれがNG?

親子会社においては、それぞれに所属する人材を効率よく適材適所に配置させるため、双方の役員を同一人物が兼任することが多くあります。以下では、どのような場合に兼任が認められるのか、またその場合に生じる問題点について、取締役と監査役それぞれに分けて検討します。

(取締役の兼任)
親子会社間で同一人物が取締役を兼任することは、会社法上は・・・

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役員の兼任の場合の報酬はどちらが払う?

では次に、上記の類型に従って役員の兼任が認められる場合に、その報酬は親会社と子会社のどちらが支払うべきでしょうか。

会社法において・・・

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