会社では、大なり小なりさまざまな会議がほぼ毎日のように開かれています。なかには会社運営の根幹にかかわる会議もあれば、重要性の低い会議もあることでしょう。数ある会議の中でも、取締役会はもっとも重要な会議と言えます。なにしろ会社の経営陣が勢揃いして議論を交わし決定を下すのが取締役会なので、重みが違います。
会社法は「取締役会で議論すべきこと」は何かについて様々な規定を設けていますが、まずは会社法が定める取締役会の役割から「取締役会で議論すべきこと」を見ていきましょう。会社法が定める取締役会の役割は以下の3つです(会社法362条2項)。
もっとも、取締役会は業務を執行するかどうかを判断するだけで、実際の業務執行は、取締役会から委任を受ける形で代表取締役や各取締役(業務執行を行う取締役を「業務執行取締役」と言います。社外取締役は業務執行を行うことが禁止されているため、業務執行取締役にはなり得ません)が行うことになります。そこで、取締役会はこれを監視・監督する必要があります。これが(2)の「取締役の職務の執行の監督」です。「監督」なので、取締役会の決議事項ではありませんが、これと(1)の「意思決定」や代表取締役・業務執行取締役が負う自己の職務の執行状況についての報告義務(会社法363条2項。詳細は「取締役会の開催頻度に注意」を参照してください)はセットと考えてよいでしょう。なお、(2)の監督の対象が「業務執行の監督」ではなく「職務執行の監督」となっているのは、取締役の職務は、業務執行以外にも、取締役会の招集、取締役会での発言や議決権の行使など様々なものがあるためです。したがって、業務執行を行わない社外取締役も(2)の監督の対象となります。
- 取締役への委任が許されない「重要な業務執行」
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上記(1)のとおり、取締役会の決議事項の一つに「業務執行の決定」がありますが、仮にあらゆる業務執行の意思決定を取締役会に逐一仰いでいたら、経営のスピードが損なわれてしまう恐れがあります。
この点に関し会社法では、業務執行のうち、会社経営上「重要な業務執行」の決定については、取締役に委任することができないとしています(会社法362条4項)。要するに、重要な業務執行については、たとえ代表取締役であっても勝手に決定することはできず、必ず取締役会の決議を経るよう義務付けているわけです。逆に言うと、“重要ではない業務執行”であれば、取締役会を経ず、代表取締役や業務執行取締役に任せることも可能ということになります。
「重要な業務執行」として会社法が具体的に列挙しているのは、以下のとおりです。・・・
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- その他の決議事項も忘れずに
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このほか、会社法に規定される取締役会の決議事項としては、下に記載したものなどがあります。・・・
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- 取締役会の開催頻度に注意
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ほとんどの会社は、月に1度、あらかじめ取締役会規程等で定められた日に「定例」の取締役会を開催しています。上場会社の場合、月次で予算と実績を対比させ、その結果を迅速に経営に反映させるために、取締役会を毎月10日までに開催するケースが多いといえます(予算の達成状況についての取締役会での報告は「予算が未達となってしまった」の「予算達成状況の報告頻度と報告方法は?」を参照)。
では、会社は、定例の取締役会さえ開催していれば法律上問題ないのでしょうか?
実は、・・・
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- 取締役会の招集は口頭でも可能だが・・・
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取締役会を開催するには、全取締役および全監査役に対して、「開催日時、場所、取締役会の目的である事項(議題)」を記載した招集通知を発するのが原則です。たとえ1人に対しでも通知が欠ければ、取締役会を適法に開催できない恐れがあります。
「通知」というと通常は書面によるものを想像するかと思いますが、・・・
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- 招集権者でない取締役が任務懈怠に該当するケースも
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会社法上、取締役会の招集は、取締役であれば誰でも行えることとされていますが(会社法366条1項)、定款または取締役会で定めることにより、これを特定の取締役に限定することができます(同項ただし書)。実際、多くの会社では、定款で取締役会の招集権者を「取締役社長」等に限定しています。
このように、取締役会の招集権限を与えられた取締役は、取締役会を招集する必要が生じた場合には、適時・適切にその権限を行使しなければならず、これを怠れば、取締役の任務懈怠として、会社に対して責任(場合によっては損害賠償責任)を負うことになります。したがって、例えば、「取締役会で決議すべき事項や協議・検討すべき事項が出てきたが、定例の取締役会の開催を待っていては時機に遅れる」というような場合、定款によって招集権者と定められた取締役は、適宜、臨時の取締役会を招集する必要があることになります。
では、定款によって招集権限を与えられていない取締役は、取締役会開催の必要性が生じた場合、招集権者である取締役に任せておくだけで、何もする必要はないのでしょうか。・・・
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- 海外出張中の取締役と連絡が取れない場合でも適法な取締役会開催は可能?
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日本企業の海外進出加速に伴い、取締役の海外出張の機会も多くなっています。こうした中、「急いで取締役会に諮りたい案件が出てきたが、取締役の一人が海外に出張中で、取締役会招集通知を送れない」といったケースは当然起こり得ます。この場合、適法に取締役会を開催するにはどのようにすればよいでしょうか?
取締役会の招集通知や招集手続の省略に関する同意は口頭で行うことが可能とはいえ、できる限り書面または電磁的方法により証拠を残しておくべきであることは上述のとおりです。
こうした場合・・・
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- 招集通知を省略する手法は?
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ここまで取締役会の招集通知について説明してきましたが、取締役会の招集通知自体をやめてしまうこともできます。会社法では、・・・
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- 取締役会決議に参加できない取締役も
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取締役は会社に対して「忠実義務」を負っています。しかし、取締役会における決議事項についてある取締役が利害関係を持っている場合、当該議決に際してその取締役が適切な判断をしない(すなわち、忠実義務を果たさない)恐れがあります。そこで会社法では、取締役会決議を行うにあたり、その決議事項について「特別の利害関係」を有する取締役は、議決に加わることができないとしています(会社法369条2項)。これにより、取締役と会社との間の利害対立を事前に防止しようというわけです。
では、「特別の利害関係」とは具体的にどのようなものでしょうか? 会社法には・・・
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- 取締役にストック・オプション付与でも「特別利害関係」が発生
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「特別の利害関係」の範囲は会社法上明確になっているわけではないことから、思わぬものが「特別の利害関係」に該当することがあります。その一つが・・・
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- 具体例でみる「特別利害関係」と「決議の定足数」の関係
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特別利害関係のある取締役がいるケースでは、決議の定足数(決議を行うために必要な最低限の出席取締役の数)についてどのように考えればいいのか、具体例でみてみましょう。・・・
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- 特別利害関係取締役の審議参加は可能?
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ある議題について特別利害関係を有する取締役が、その議題について議決権を行使することができないことはこれまで述べてきたとおりです(「具体例でみる「特別利害関係」と「決議の定足数」の関係」を参照してください)。では、当該取締役は、その「審議」にさえ参加することはできないのでしょうか?
実はこの問題を巡っては、・・・
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- 特別利害関係人が間違って議決権を行使したら決議の効力はどうなる?
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冒頭で述べたとおり、「特別の利害関係」の定義は会社法で明確にされているわけではないことから、ある取締役が特別利害関係人に該当することに気付かないまま議決権を行使してしまった、というようなことも起こり得ます。この場合、・・・
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- 取締役会議事録に署名することの重み
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会社法上、取締役会に出席した取締役および監査役は、当該取締役会に係る議事録が書面をもって作成されている場合には、これに「署名または記名押印」しなければならないこととされています(同法369条3項)。ちなみに、「署名」とは自筆でサインすること、「記名押印」とはあらかじめ名前が印字された箇所の横に印鑑を押すことを言います。もちろん署名の横にさらに押印しても構いません。印鑑は必ずしも実印である必要はありませんが、・・・
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- 取締役会議事録への署名を拒否すべきケースとは?
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では、議事録への署名または記名押印を求められた際に、その内容に不備があることを理由にこれを拒むことはできるのでしょうか?
上述のとおり、会社法上、取締役会に出席した取締役および監査役は、当該取締役会に係る議事録が書面をもって作成されている場合には、これに署名または記名押印しなければならないこととされています。すわなち、「署名または記名押印」は“義務”であり、原則としてこれを拒否することはできないと考えられます。
もっとも、例えば、・・・
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- 議事録に署名した場合に考えられる不利益とは?
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では、議事録の内容に不備があるにもかかわらず、訂正を求めずに署名または記名押印した取締役および監査役には、どのような不利益が生じ得るのでしょうか?
上述のとおり、・・・
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