総会運営事務局が「動議」に神経質になる理由
株主総会を滞りなく終わらせるため、総会運営事務局(通常は総務部が中心となり、顧問弁護士の協力を仰いで運営。以下、「事務局」)が中心となり、事前にシナリオを準備して、リハーサルを繰り返す会社も少なくないでしょう。株主がどのような質問をしてくるのか、それに対してどのように答えるのが最善なのか、総会屋とは言わないまでも議長の指示に従わない質問や野次などの“不規則発言”を繰り返す株主にどのように対応するのか等、事務局が事前に検討をすべき事項は多岐にわたります。なかでも、事務局やそれを統括する総会担当取締役が特に気をもむのが、株主総会で「動議」が出るのかどうかです。
なぜ事務局は動議が出ることに神経質になるのでしょうか。それは、動議への対応を間違えると、株主総会決議が取り消されてしまう可能性があるからです。以下、詳しく見ていきましょう。
動議には「実質的動議」と「手続的動議」の2種類
動議とは、株主総会において「株主側」から審議・採決の提案が行われることをいいます。動議には「実質的動議」と「手続的動議」の2種類があります。
実質的動議とは、株主が株主総会において、株主総会の目的事項である「議題」に対して「議案」を提出することです(会社法304条。議題と議案の違いについては後述します)。ただし、取締役会設置会社では、株主には株主総会の場において「議題」そのものを提出する権利はなく、株主総会の日より8週間前までに、一定の要件(後述の「適法な実質的動議と不適法な実質的動議 」を参照してください)を満たした上で、議題を株主提案することができるにとどまります。
これに対し、取締役会非設置会社は、いつでも議題提案ができます(会社法303条1項)。これは、取締役会非設置会社は、株主の意思を直接経営に反映することを企図して、株主総会が会社の組織、運営、管理その他会社に関する一切の事項を決議することができるものとし(会社法295条1項)、事前に通知されていない事項についても株主総会で決議できるように設計されており(会社法309条5項の反対解釈)、議題の提案時期を制限して株主の意思を反映する機会を限定する理由がないためです。
一方、手続的動議とは、議題に対してではなく、「株主総会の運営」や「議事進行」に関する株主からの提案です。
動議が適法になされたにもかかわらず、これを“適切に”取り扱うことなく審議を進めると、株主総会決議の取消事由となり得ます。したがって、会社としては、株主総会の準備の段階から、考えられる動議とその対処方法について入念な検討を行っておくとともに、実際に株主総会で動議が出された場合には細心の注意を払って対応する必要があります。
以下、動議の具体的な例とその対応方法について見ていきましょう。
適法な実質的動議と不適法な実質的動議
本題に入る前に、まず「議題」と「議案」の違いを説明しておきましょう。
取締役選任のケースを例にとると、・・・
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