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事務局まで
釣った魚の餌代の方が安い!?
「1:5の法則」―――これは何を意味するのかをご存じでしょうか?
1:5の法則とは、「新規得意先に販売するコストは既存得意先へ販売するコストの5倍かかる」というマーケティング用語です。このほか、「既存の顧客離れを5%改善すれば、利益が最低でも25%は改善される」ということを意味する「5:25の法則」という用語もあります。
いずれもその意図するところは、いうなれば「釣った魚には餌をあげない」のではダメだということです。要するに、既存顧客を継続的に囲い込んでおくことこそが重要であるとマーケティング論では説いているわけです。既存顧客の購入量や購入頻度を高める仕組みを構築して、既存顧客の離反率を抑えれば、コスト面でも(1:5の法則)、収益面でも(5:25の法則)会社にプラスの効果をもたらす可能性は高くなるでしょう。
そうであれば、既存の顧客を多数抱えている会社は新規取引先の開拓を止めて、既存顧客の維持だけに注力すべきではないかと考えてしまいがちですが、果たしてそれでよいのでしょうか?
既存顧客は減っていくものと考えるべき
既存顧客を維持していくことは、会社が安定した収益を獲得していくうえで極めて重要です。しかし、既存顧客のうち特定の顧客への依存度が高まると、その顧客の業績悪化に連動して自社の収益も悪化してしまうリスクがあります。例えば、2011年の東日本大震災によって大口顧客が被災し業績が大きく低迷した結果、それに連動して供給元の会社も大きなダメージを受けてしまったというケースが少なからずありました。
また、競合他社が多い分野で事業を展開している会社は、常に競合他社との価格競争にさらされているため、既存顧客への依存度が高ければ高いほど、今後も既存顧客との関係を継続したいと考え、既存顧客からの値下げ要請に応じざるを得なくなります。
しかし、たとえ値下げ要請に応じたとしても、競合他社が品質や機能の点で差別化を図り、顧客のニーズにより適合した製品を導入してきた場合には、いくら長年付き合いのある大口の顧客であっても、競合他社にシフトしてしまうリスクがあります。
会社の業種や事業内容、製品・サービスの差別化の程度、競合他社の状況にもよりますが、既存顧客を1社も離反させることなく維持していくことは難しく、毎年何%かの既存顧客は他社に流れていくのではないでしょうか。したがって、値下げ要請や既存顧客のロストに起因する収益の減少分を何らかの形で補っていかなければ、事業を継続していくことは難しくなります。
そこで新規取引先の開拓が必要となります。既存顧客の維持に努めつつも、新規取引先の開拓をバランスよく行うことは、会社の事業継続という長期的な視点から非常に重要です。
「営業手法」と「営業先」に要注意
新規得意先の開拓は、実際のところ容易ではありません。特に最初の接点を作るのは難しく、有名企業であっても、テレアポやダイレクトメール、飛び込み営業といった旧来型の手法を用いることが珍しくありません。
新規顧客の開拓方法としては、紹介による場合の成約率が比較的高いといえます。紹介がない場合には、名簿を入手してこれを基に営業をかける手法がよく見られますが、この場合、個人情報保護法や不正競争防止法に違反していないかどうかについて留意する必要があります。また、同業他社などから引き抜いた人材のネットワークを活用するケースもよくありますが、この場合は、不正競争防止法に違反していないかどうかについて事前に検討すべきです。
もっとも、このように苦労して営業をかけた結果、新規得意先候補から良い感触を得たからといって、直ちに取引を開始するのは避けたいところです。上場会社である以上、・・・
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- 与信限度枠の設定ミスで多額の貸倒れや取込み詐欺も
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新規に開拓してきた会社と取引を開始すべきかどうかは、どのように判断すればよいのでしょうか?
世の中には良い会社もあれば悪い会社もあります。何をもって「良い」というのかは会社を見る視点によっても変わってきますが、新規に取引を開始する上では、財務状況が健全であり、収益性に問題がなく、ビジネスに成長の余地がある会社が「良い会社」だといえます。
このような会社を「良い会社」と判断する理由は、・・・
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- 新規取引先の信用力を判断するポイントは?
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上記のような事態を避け、自社の財産を保全する観点からも、新規取引先の信用情報に基づく与信限度枠の設定が重要になります。与信限度枠を設定するためには、取引を行うかどうかの審査の基準、与信限度枠の設定方法、承認方法、毎期の見直し方法、モニタリング方法などについて、あらかじめ社内規程を作成しておく必要があります。上場会社であれば、当然こうした社内規程は整備されているはずですが、与信管理の一連の手続(信用情報の入手方法、審査の基準、与信限度枠の設定方法、モニタリング方法)が網羅的に規定されているかどうかについて、営業担当取締役や監査役としては、いま一度内容を確認してみるとよいでしょう。
新規取引先の信用力を判断するポイントは以下のとおり・・・
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- 与信限度枠の設定方法は自社に合ったものを
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与信調査の結果、審査などにおいて新規取引先の信用力が一定程度以上であると判断した場合、与信限度枠の設定を行います。上述したとおり、与信限度枠は「この取引先に対してはこの金額まで掛売りしてもよい」という限度額のことです。与信限度枠を設けなければいくらでも掛売りすることができてしまい、貸し倒れリスクが高まりますので、新規取引先の信用力に応じた与信限度枠を適切に設定する必要があります。
与信限度枠の設定方法(計算ロジック)は様々であり、これが正解というものはありません。例えば、・・・
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- 与信限度枠の承認時にやってはならないこと
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既に述べたとおり、“与信管理に関する内部統制構築”の観点から、あらかじめ社内規程に与信限度枠の承認プロセスに関する規定も盛り込んでおく必要があります。
実務的には、与信限度枠の大小によって承認権限者や必要資料が変わるケースがよく見受けられます。例えば、・・・
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- 定例会議で報告する仕組みを
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上述したとおり、“与信管理に関する内部統制の構築”については、社内審査などの承認手続の構築が不可欠ですが、これは事前統制の構築になります。次に与信限度枠を設定したら、それが守られているかどうかを事後的にモニタリングする事後統制の構築も必要です。例えば、・・・
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- 反社チェックの必要性と反社条項
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ここまで与信調査について解説してきましたが、もう一つ忘れてはならないのが、いわゆる“反社チェック”、すなわち、新規取引先が反社会的勢力との関わりがないかどうかや、そもそも新規取引先自体が反社会的勢力ではないことの調査です。近年、反社会的勢力は組織実態を隠蔽する動きを強めていて、一般事業会社を装って経済活動を行ったり資金調達活動を行ったりするなど、その手口が巧妙化しています。その結果、反社会的勢力との取引の排除を掲げる会社であっても、知らず知らずの内に取引を行ってしまうおそれがあるため、このような調査が必要になります。
上場会社が反社会的勢力と取引を行っていたということになれば、社会的信用が失墜してしまうのはもちろんですが、・・・
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- 新規取引先の開拓に伴いコストの増加も
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新規取引先を開拓した場合、納期を守れるような生産計画や受注方針を立てることが重要となってきます。納期遅れは取引先からの信用の失墜はもちろん、納入品が取引先の工場の工程で使用する部品などであった場合には、工場の操業停止やパート従業員の一時解雇などを招き、取引先の経営に重大な影響を与えることになります。そこで、生産計画は自社の能力に見合ったものとなっているか、販売一辺倒の受注方針となっていないか、生産調整会議(工場と営業との意思疎通を行う会議)やステアリング・コミッティ(全社的なプロジェクトを遂行する社内横断的な運営会議)で進捗状況の把握はできているか、などを確認し、適宜見直しを図っていくことが必要です。また、取引量(生産量)の拡大に伴い、品質が低下しクレーム発生につながるおそれがあります。そこで、・・・
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