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【人事・労務】人件費を抑制したい

 

付加価値の減少割合が人件費の減少割合を大幅に上回る意味

グローバル競争のさらなる激化などによって、日本企業は厳しい経営環境下での事業活動を強いられています。その結果、企業の収益構造は不安定さを増しており、人件費の原資である付加価値は近年、大きく減少しています。付加価値とは、事業活動によって生み出される価値であり、「売上高-その売上を上げるために外部から調達した原材料や商品、サービス」によって算定されます。要するに、「顧客が自社に支払ってくれる金額-自社が外部に支払う金額」が付加価値ということになります。この付加価値が、人件費、支払利息、賃借料、税金、減価償却費などの原資となるため、付加価値を生み出さなければ、これらの費用を負担することもできません。したがって、健全な収益構造を維持するためには、理屈上は付加価値の減少に応じて人件費も減少させなければならないはずです。では、実際のところ、付加価値の減少に対して、人件費はどのような動向を示しているのでしょうか。

財務省「法人企業統計年報」によれば、付加価値額(全産業・規模計)は2007年度からの5年度間で5.3%減少した一方、人件費はほぼ横ばい(0.8%減)となっています。製造業ではさらに両者の格差が顕著であり、付加価値額が19.4%減少しているのに対して、人件費は8.4%の減少にとどまっています。

このように付加価値の減少割合が人件費の減少割合を大幅に上回っているという事実は、付加価値が減少する厳しい経営環境の中でも、企業が人件費を適切に抑制できていないということを示しています。

総額人件費は所定内給与の約1.7倍

従業員を雇用するにあたって、企業が負担している人件費は毎月の給与(所定内給与)や時間外・休日勤務・深夜勤務手当(所定外給与)、賞与・一時金(ボーナス)などといった「現金給与」だけではありません。健康保険料や厚生年金保険料などの法定福利費、社宅の管理・運営費やレクリエーション費用など企業が任意に支出する法定外福利費、Off-JT(⇔OJT=On the Job Training)といった教育訓練費などの「現金給与以外の人件費」も負担しています。

その結果、・・・

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懸念される3つの人件費増加要因

さらに、今後、人件費を増加させる“不可抗力”とも言える要因が存在することにも役員は留意する必要があります。

1つ目は・・・

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人件費抑制の具体策【前半】―――雇用調整に踏み切る前にやるべきこと

近年、「人件費抑制策=雇用調整」と安易に考える風潮がありますが、雇用調整はあくまで最終手段であり、極力避けるべきです。

そこでまず、雇用調整の前に検討するべき対応策を挙げます。基本的には検討すべきと考える順番に紹介していきますが、実際には必ずしもこの順番通りである必要はなく、自社の状況に応じて、労働組合等と真摯に話し合い、納得してもらったうえで実行していくことになります。

また、これから提示する対応策には、「労働条件の不利益変更」に該当するものが多く含まれ、その実施にあたっては、原則的には従業員との個別合意が求められますが(労働契約法9条)、通常の実務では、労働組合との合意である労働協約の締結、あるいは就業規則の変更の手続きをとることによって行います。ただ、その際には、労働条件の不利益変更を行なうことについて、従業員が受ける不利益を上回る合理的な理由が存在することが求められます(同10条)。例えば、労働条件の変更を行わなければ、会社の存続自体が危ぶまれたり、経営危機によって従業員の雇用調整が予想されるような場合です。この点を十分に踏まえて慎重に検討・対応することが、従業員とのトラブルを未然に防止するという観点からも極めて重要となります。

具体的な対応策は以下のとおりです。
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人件費抑制の具体策【後半】―――雇用調整の種類

これまでに挙げた具体策を講じてもなお、さらなる人件費の抑制が避けられない場合には、雇用調整に踏み切りますが、これは人件費抑制策の最終手段であり、極力避けるべきです。その理由として特に重要なのが次の3つです。・・・

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人件費抑制を成功させるカギは?

ヒトがいなければ企業は成り立ちません。しかし、企業経営が破たんして事業継続ができなくなり、倒産してしまえば、雇用は維持できません。企業が存続してこそ従業員の雇用の維持・安定は図られるわけで、その逆はありません。

人件費抑制を検討・実施しなければならないということは、・・・

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