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【経営上のリスク】“ネット炎上”リスクを軽減したい

 

文責:株式会社エルテス 執行役員 安達 亮介
執筆協力:ソーシャルリスク総研 研究員 横田 潤

企業経営を左右しかねない“ネット炎上”

先日、ある上場企業の株価が短期間で半値近くまで急落しました。その背景には、消費者に損失を与えかねない複雑な契約形態について、ユーザーがソーシャルメディア上で批判したことに端を発する“騒動”があります。その後も同社のビジネスモデルの問題点が、従業員等の関係者と思われる人々から次々とソーシャルメディアを含むインターネット上に告発されるなど、この騒動は未だに収まる気配を見せていません。このような、いわゆる“ネット炎上”は、企業経営を左右しかねないリスクとして、経営陣にとって喫緊の経営課題になっているといっても過言ではありません。

図表1のとおり、日本におけるソーシャルメディアの利用者数は増加の一途をたどっており、2016年末には7000万人弱、インターネット利用者の実に3人に2人がソーシャルメディアを利用するという状況になることが見込まれています。
図表1  日本におけるソーシャルメディア利用者数と利用率の推移

出典:ICT総研

出典:ICT総研

ソーシャルメディア利用者の増加と比例するように、ネット炎上の件数も増加しています。特に、スマートフォン、Twitter、FacebookといったSNSのツールが普及した2011年以降は、炎上に至るまでの情報の拡散量、拡散スピードは飛躍的に高まっています。また、「まとめサイト」と呼ばれる、話題のトピックに関する2ちゃんねるやTwitter上での反応を抽出したサイトに情報がまとめられると、その情報がソーシャルメディア上で再び拡散され、炎上のスピードが跳ね上がる傾向があります。

エルテスの調べでは、炎上件数は2015年にはじめて年間1000件を突破し、今後も増加傾向が続くと見込まれています。
図表2 炎上件数の推移

マスメディアによる批判とソーシャルメディアによる批判の違い

では、企業が実際にネット炎上に遭ってしまった場合、どういった被害の発生が想定されるのでしょうか。

最も影響が甚大なのは、企業のレピュテーションへのダメージ、具体的には、企業イメージや企業価値の毀損です。従来から見られるマスメディアから批判されることと、昨今のソーシャルメディア上で批判されることの違いは、後者では、ネット炎上を引き起こした原因や顛末、世間の反応などを含めたネガティブな情報が半永久的に残るという点です。

マスメディアによる批判はその瞬間、絶大な影響力を持ちますが、次の話題が現れればたちまち世間から忘れ去られます。一方、ソーシャルメディアでの告発を発端とする爆発的な批判の集中(=ネット炎上)がひとたび起こると、その痕跡はインターネット上に残り続けます。実際、数年経ってから企業名や商品名を検索しても、いまだにネット炎上を引き起こした事態の詳細がインターネット上に残っているということが少なくありません。この場合、長期にわたって企業のレピュテーションにダメージを与え、その結果、顧客離れ、売上低下、取引の敬遠、さらには採用活動への悪影響などにつながることも考えられます。

また、炎上の原因に深く関与した個人がインターネットユーザーによる攻撃の標的になるケースもよくあります。具体的には、複数の情報を組み合わせることで、実名、住所、勤務先、家族構成、写真などの個人情報が割り出され、インターネット上に掲載されます。炎上の元となった個人や企業の関係者に攻撃を加えることによって、ある種の“社会的制裁”を与えようというのが、インターネットユーザーの狙いです。後述するように、こうした情報は弁護士を介して削除要請を出すなどして消していくことは可能ですが、ひとたび掲載されてしまうと大量にコピーサイトが作成されるため、“いたちごっこ”状態となって最後は泣き寝入りせざるを得なくなるというケースも多く見受けられます。上述した企業そのもののネット炎上と同様に、数年経ってもインターネット上に痕跡が残ってしまうことは多々あります。

企業が“ネット炎上”するパターン

では、企業が“ネット炎上”するのはどのような場合でしょうか。いくつかのパターンを具体的に見てみましょう。・・・

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ネガティブな書き込みを削除することは可能か?

ソーシャルメディアや2ちゃんねるなどに自社や自社商品・サービスに対するネガティブな風評や役員の悪口を書き込まれた場合、「削除したい」と考えるのは当然でしょう。しかし、上記でも触れたとおり、書き込みの削除は非常に困難であり、かつ、効率が悪いというのが実情です。

その主な理由として、・・・

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社員のSNS利用を制限することは有効か?

経営陣としては、「削除が事実上困難であるならば、いっそのこと社員のソーシャルメディアの利用そのものを制限することは出来ないのか」と考えるかもしれません。

しかしながら、この場合、業務時間外におけるソーシャルメディアの利用を会社が制限することが果たして法的、道義的に適切であるのかという問題が生じます。また、既にFacebookで実名、企業名を公開してビジネス用途に活用している人も多いため、ソーシャルメディアの利用そのものを制限することは現実的とは言えません。こうした中で、例えば・・・

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問われるソーシャルメディアへの理解と企業の姿勢

ソーシャルメディアを活用する必要性や活用の方法は業種・業態によって様々ですが、いずれにせよ、企業が完全にソーシャルメディアから距離を置くということは事実上不可能です。というのも、・・・

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