KKK製作所(3月決算)の今期の決算は、新製品の売れ行きが好調なうえ、円安により輸出品の価格競争力が向上し北米市場でのシェアが高まったことで、過去最高益を計上できる見込みである。従業員の間に「夏のボーナスは倍増ではないか」との噂が駆け巡り、決算月を迎えた社内はどことなく浮足立った雰囲気だ。
浮足立っているのは従業員だけではない。KKK製作所の取締役会では、役員全員が今期決算の着地予想に目を通しながら満足げな表情を浮かべている。
取締役経理部長:「今期は新製品の販売が好調だったことと、円安効果により海外市場でライバル社のシェアを奪えたことから、過去最高益を達成できる見込みです。」
K社長:「円高が長引いたときに、全社が一丸となって「円高でも利益を出せる体質」に変わるため様々な施策に取り組んできた。その効果が出てきたタイミングで、たまたま為替が円安に大きく振れ、そのおかげで海外市場での新興国企業との価格競争に打ち勝つことができた。しかし、来期もこのまま円安が続くとは限らない。そこで利益が出ている内に将来に向けての次の対策を打っておきたい。どのような対策が考えられるのか、皆さんの知恵を貸して欲しい。」
取締役営業部長:「1つ提案があります。リベートを先払いする案はいかがでしょうか?」
K社長:「リベートの先払い? どういうことか聞かせてくれ。」
取締役営業部長:「はい。CCC電機とのリベート契約によると、毎年12月末を区切りとして、当社からの出荷実績を1年分集計したうえで、その出荷実績をもとに事前に合意した計算式により計算したリベート額を、当社からCCC電機に対して支払っています。CCC電機の場合、他社と異なり出荷量が比較的安定しているので、12月までの出荷見込みを高い確度で予測できます。この出荷見込みに応じて計算したリベートを先に支払い、今期の費用にするというのが、私の案です。来期の費用を今期に計上できれは、来期が楽になりますし、CCC電機としても、本来の受取日より前に現金を受け取ることができるので、悪い話ではないはずです。」
取締役経理部長:「営業部長、その先払いリベートは残念ながら今期の費用には計上できません。リベートは発生した期間に対応するように費用計上する必要があり、たとえ先に支払ったとしても、発生していない期間に費用計上するわけにはいかないのです。」
取締役営業部長:「私はありもしない費用の計上を提案しているのではありません。現金で支払った分を費用計上する案を提案しているだけです。実際にキャッシュアウトがあるのだから、費用計上しても問題はないはずです。」
取締役経理部長:「リベートは出荷(売上)に対応して支払うものであり、売上の計上と同じタイミングで費用計上する必要があります。収益に対応するように費用を計上しないと、利益管理を適切に行えなくなってしまいます。」
上の取締役経理部長と取締役営業部長の発言のうち、どちらの発言がGOOD発言でしょうか?
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