M社(東証第一部上場の製造業)は、会社法改正や機関投資家からの要求を受け、社外取締役の候補者選びに取りかかっている最中である。役員の知人を中心にこれぞと思う社外取締役候補者に就任を打診しているが、なかなか良い返事をもらうことができない。
M社は既存事業の販売額の落ち込みが大きく、起死回生を狙い5年前に大規模な設備投資を実施のうえ新規事業に進出したものの、製品の仕損率が高いことから粗利が低く、有利子負債の削減がままならないという状況にある。どうやら、社外取締役候補者から「財務リスクが高い会社」と判断され、就任を固辞されているようだ。
仕損率 : 仕損とは、製造はしたものの、自社の品質基準を下回ったことなどにより「失敗作品」となってしまうこと。投入に対して仕損したものの割合を仕損率という。
取締役会でも、社外取締役候補者の就任固辞が話題となり、事態の打開に向け各取締役がそれぞれ解決策を述べました。次のAからDの発言のうち、誰の発言がGOOD発言でしょうか?
取締役A:「私の知人にX社で生産管理に長年携わった者がいます。先日、X社の常務取締役を退任し、時間をもてあましていると聞いていますが、社外取締役への就任を打診してみましょうか。」
取締役B:「A取締役のお知り合いの方は生産管理が専門ということですが、法律や会計の専門家ではないようですので、ガバナンスの確保という点からは適性に欠けるのではないでしょうか。ところで、専務取締役のご令嬢は確か弁護士でしたよね? 法律の専門家としての知見を活かしたご意見番として当社の社外取締役になっていただいてはどうでしょうか? また、我が社は女性幹部社員が少ないので、女性を積極的に登用する企業として、投資家へのアピールにもなりますし、女性従業員のやる気アップにもつながります。」
取締役C:「社外監査役を増員して、現在の2名から4名にする案はどうでしょうか。監査役が倍になれば、機関投資家にもガバナンスの向上を十分アピールできるので、あえて社外取締役を選任しなくてもよいのではないでしょうか。」
取締役D:「大学教授のYさんは、奇しくも私の大学時代のゼミ仲間です。マスコミからも引っ張りだこで、テレビにも多数出演しており、知名度は抜群です。有名な上場企業の社外取締役を2社兼任していますし、実績も十分です。彼なら投資家の“受け“は良いはずです。」
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