適時開示と法定開示とIR情報、投資判断への影響がもっとも大きいのは?
上場会社の役員であれば、少なくとも「適時開示」という言葉は知っていると思いますが、この適時開示がどのような場合に求められるのかまで理解している人は多くないようです。しかし、適時開示をきちんと理解していないということは、実は非常にリスクが高いということを認識する必要があります。
適時開示とは、証券取引所が上場会社に対して、投資家の投資判断への影響が大きいと考えられる情報の開示を求めるものです。有価証券報告書をはじめ金融商品取引法などの法律によって義務付けられた情報開示(法定開示)ではなく、あくまで証券取引所の規則(有価証券上場規程)に基づく情報開示になります。法律によって義務付けられた情報開示ではないというとそれほど重要に見えないかもしれませんが、投資判断への影響という点では、有価証券報告書よりも適時開示の方が圧倒的に重要性が高いと言えます。なぜなら、適時開示は上場会社による投資判断用の情報の“最初の開示”であり、また、当該情報は誰でも閲覧できる「TDnet(Timely Disclosure network:適時開示情報伝達システム)」という東京証券取引所が運営するWebサイト上に時系列に開示されていくからです。適時開示を行う前に、当該情報を他の媒体で開示することはできません(詳細は後述)。すなわち、投資家の投資判断は適時開示によって形成されているのです。
では、IR情報と適時開示情報ではどちらが投資家の投資判断への影響が大きいでしょうか。以前、某IR支援会社の役員が「適時開示なんて、ただ決められた様式のとおり適当に作って出しておけばよい」と話しているのを聞いたことがあります(これは、「投資判断への影響が大きいのは、適時開示ではなく自社が作成を支援しているIR情報である」ということを意図した発言だと思われます)。もちろん、IR活動は適正な株価形成のために重要ですが(この点については「IR活動により適正な株価を形成したい」参照)、投資家に自社を良く見せるために工夫を凝らして作るIR情報と、証券取引所が定めたルールに従って作成しなければならず恣意性が低い適時開示情報のどちらに対し短期的・直接的に株価が反応するのかと言えば、IR情報ではなく適時開示情報の方です。万が一「適時開示は適当でいい」という考えを持っているとすれば、すぐに改めるべきでしょう。
規則に書いていないことは開示しなくてよい?
適時開示が求められる情報は、(1)決算情報、(2)決定事実、(3)発生事実の3種類に分けることができます。このうち「決定事実」と「発生事実」は・・・
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