IR活動が必要な理由
GE(ジェネラルエレクトリック社)が米国で初めて社内にIR部門を設置したのは1953年です。米国では戦略的なIR活動が常識となっているのに対し、日本企業のIRへの取組みは依然として企業間格差が大きいというのが実状です。
「IRのコストは最小限に抑え、その分、営業推進のためのPRにもっとコストを使いたい」――そう話す上場企業のトップは未だに少なくありません。IR活動に消極的な企業にその理由を聞くと、(1)社内にIRを任せられる人材がいない、(2)PR予算はあるが、IR予算はとっていない、(3)IRの効果がはっきりしない――というのがほぼ共通する回答です。特に徹底したコスト管理が求められる経営者にとっては、(3)の「効果がはっきりしない」というのが、IR活動に消極的な最大の理由ではないでしょうか。
効果が分からないから予算をとらず、IRを担う人材も育成・採用しない――という理屈も理解できなくはありません。ただ、「IR活動の効果が見えない」原因が、実は「IR活動の目標がない」ことにあるケースは少なくありません。目標が明確であれば、「IR活動の効果」も見えるはずです。
IR活動の目標は、適正な株価形成にあります。上場企業である以上、「株価」は “信用の証”でもあり、株価の動向はビジネスにも少なからぬ影響を与えます。したがって、自社の株価が適正に形成されていることは極めて重要であり、そのためにはIR活動が有効です。機関投資家にとって、IR活動に力を入れている企業は、十分な情報が提供されている分不確実性が減り、株価が乱高下するリスクが低減されていると映ります。特に株式を長期保有する機関投資家は、株価の乱高下のリスクが小さい安定的な企業を好む傾向があります。また、機関投資家向けばかりでなく、個人投資家向けのIR活動にもしっかりと取り組んでいる企業の株価のパフォーマンスは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)を上回るという実証研究もあります。
企業にとっても、株式市場の暴落時に株が極端に売られ過ぎないということは、信用リスクの低減や取引先からの信頼向上につながります。IR活動による適正な株価形成は、投資家にアピールするのみならず、ビジネスにもプラスの効果があるということです。
PERの単純比較では「適正な株価」は分からない
IR活動は株価と密接な関係を持っています。しかし、IR活動の目標はあくまで「適正な株価の形成」であって、単純に「株価を上げる」ことではありません。
では、「適正な株価」とは果たしてどのように定義されるのでしょうか。
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