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【株価】株価が安すぎるのでは?

 

株価低迷が会社経営にもたらす悪影響

上場会社の株価は株式市場における需要と供給のバランスのほか、業績、将来の会社の姿を描く事業計画、ブランドイメージ、経済環境、政治動向など様々な要因で変動し、株価が低迷すれば、上場会社の経営に様々な悪影響をもたらすことになります。

まず懸念されるのが、株式市場における需給環境のさらなる悪化です。持合株式でもない限り、通常の株主は、株価が一定レベル以下に下がると、損切り覚悟で株式の売却に動きます。その結果、株式の需給環境は一層悪化し、さらに株価を押し下げる可能性があります。一方、株式を売却しなかった株主の中からは、株主総会の場で株価の低迷について厳しい質問をする者が登場することが予想されますし、株価に不満をもった株主がインターネットの掲示板等に会社や役員の批判を書き込むことも考えられます。会社に対して何のしがらみもない一般株主がこうした行動を起したとしても何ら不思議ではありません。

株価が低くなれば、より安い資金で会社を買収することが可能になるため、敵対的買収のリスクも高まります。

また、増資により資金調達をしようとする場合、増資によって割り当てられる株式の発行価格は、基本的に「発行価格決定日の前日の終値」 を参考に決定されるため、株価が低迷していれば、希望する発行価格・株式数で資金調達を行うことが困難となってしまいます。株価低迷の中で当初の希望額の全額を調達しようとすると、増資によって割り当てる株式の数を大幅に増やす()ことが不可欠になり、その結果、希薄化(1株当たりの価値が薄まること)が起こります。そうなれば株主の不満が高まり、場合によっては経営陣の交代を迫られる可能性もあるでしょう。

 これにより株式市場における需給環境が悪くなり、さらなる株価低迷の要因となります。

さらに、株価低迷は社内にも悪影響をもたらすことになります。例えば、従業員持株会や役員持株会等を通じて会社の株式を保有している従業員や役員にとっては、株価の下落は資産価値の減少を意味することから、仕事へのモチベーション低下を招きかねません(会社によっては、取引先向けの「取引先持株会」を設置しているところもありますが、株価低迷により持株会に加入し続けることへの負担感が増すことが考えられます)。

同様に、取締役や従業員にストック・オプションを発行している場合、株価が行使価格(株式を取得できる金額)を大きく下回ってしまうと、やはりモチベーション低下につながりかねません。

このほか、株価低迷が継続している状況は、新卒や中途採用の候補者に会社に対する不安を抱かせ、優秀な人材を採用しにくくなる可能性があります。

上述のとおり株価は株式市場の需給バランスにも左右されるため、日々の株価に一喜一憂する必要はありません。しかし、株価低迷が続くということは、株式市場から会社に対する(ネガティブな意味での)メッセージであることも多く、また、株価低迷の度合いによっては証券取引所の定める上場廃止基準に抵触するおそれもあります(詳細は後述の「時価総額の低下で上場廃止に」を参照してください)。したがって、上場会社である以上、株価の低迷を放置しておくことは避けるべきであり、役員としては何らかの対策を検討する必要があります。

主な対策として考えられるのが、
(1)企業価値の向上
(2)IR活動の充実
(3)株主への利益還元
(4)役員・従業員のモチベーション向上
(5)持株会の利用
です。以下、各施策について詳しく解説していきます。

(1)企業価値の向上

冒頭でも述べたように、上場会社の株価は需給バランスや、業績、ブランドイメージ、経済環境、政治動向など様々な要因で変動します。経済環境や政治動向は自社だけではどうすることもできない要因ですが、業績やブランドイメージは自社の努力で改善することができます。

そして、業績やブランドイメージ等を総称したものが「企業価値」です。具体的には、
ア 現在の業績や資産、技術、商品開発力等、「現在の会社の状況から評価した価値」
イ 会社の戦略、ビジネスモデルによってもたらされる「将来の収益力から見込まれる価値」
ウ ブランドを構成する主要素であり、自社および自社製品・サービスを、「他社および他社製品・サービスと差別化するイメージ」
から構成されると言われています。

なかでも、株価向上のためにもっとも重要なのが、・・・

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(2)IR活動の充実

もっとも、企業価値がそのまま株価に反映されるとは限りません。この“企業価値と株価のズレ”は、会社の経営権の維持にも重要な影響を及ぼす恐れがあります。冒頭でも触れたように、企業価値に比べて株価が割安であれば、本来より少ない資金でその会社の株式を取得できるため、敵対的買収の標的になりやすいからです。

会社の業績が良いにもかかわらず株価が低い場合には、「会社の実態がきちんと投資家に伝わっているか」という観点からの検証が必要です。経営陣は、投資家に対して会社の業績や将来性に関する情報をタイムリーかつ十分に提供することにより、企業価値に等しい適正な株価の形成を促すことも、「重要な経営課題」であると認識すべきです。

適正な株価形成を促進する重要な手段が、・・・

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(3)株主への利益還元

株主に利益を還元する方法としてもっとも多く活用されているのが、・・・

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(4)役員・従業員のモチベーション向上

役員・従業員のモチベーション向上に有効なのが、・・・

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(5)持株会の利用

上述のとおり、株価が安すぎると敵対的買収の標的になりやすくなることから、近年は「持株会」制度を敵対的買収等に対する防衛策として位置付ける会社も増えています。持株会制度には、・・・

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時価総額の低下で上場廃止に

株価低迷により時価総額が低下すれば、・・・

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