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【経営上のリスク】工場が被災した

 

一つのリソースの使用不能が各方面に影響も

会社は、地震、台風、洪水などの自然災害や、火災や各種の事故、さらにはサイバー攻撃といった人為的災害など、さまざまな災害に襲われる可能性があります。我が国に未曾有の被害をもたらした東日本大震災の傷跡はいまだ癒えておらず、その影響を引きずる会社も多く残されています。

こうした災害によって、人員・製品・原材料・データなど会社経営に必要なリソースの入手、活用または外部への提供が不能になれば、それがたとえ短期間であっても会社は大きな損失を被る可能性があります。近年、分業化が進行し、あわせて企業規模の拡大や組織が複雑化したことで、何か一つのリソースが使用不能な状態になっただけで、その影響が各方面に広がり、取引先を巻き込みながら損失を拡大させることが予想されます。例えば、東日本大震災の際に、一部の自動車部品メーカーの部品供給が停止したことで、多くの自動車メーカーの操業が停止してしまう事態が発生したことは記憶に新しいところです。

経営者としては、災害は決して特別なものではなく、「日々の業務の延長線上」にあると考え、災害が会社に及ぼすリスクを常に意識し、それに備えることが重要です。これを具現化するのがリスクマネジメントです。リスクマネジメントとは、経営活動で生じるさまざまな危険を回避するため、あるいは損失を最小化するための仕組みや活動のことを言います。

以下では、「工場の被災」に関するリスクマネジメントの具体策を見ていきましょう。

リスクマネジメントの具体策は?

(1)工場の災害対応能力を考える
被災した場合のリスクを回避するための具体策として、まず工場の災害対応能力の向上が考えられます。すなわち、火災に対しては、防火壁、難燃性の素材を使った内装、消防法より厳しいスプリンクラー設置基準の採用、また、地震に対しては、耐震工事、津波対策、落下防止装置の設置、避難経路の確認などが考えられます。水災に対しては、土のうの準備が欠かせません。さらに、消防法に基づく防火管理講習や防災管理講習の受講、防災訓練の定期的実施も重要です。

(2)保険を利用する
通常の火災保険では、地震や津波による被害は補償されません。また、地震保険に加入しようにも、通常の地震保険は対象が住居用に限られますので、店舗・事務所・工場は加入できません。しかし、火災保険に地震特約や水災特約などを付けることで火災保険の契約では保険金支払いの対象とならない地震や津波による建物や設備・什器、商品等の損害などを補償することが可能です。引き受け条件等は保険会社によって異なるため、内容を十分に確認する必要があります。

(3)在庫の圧縮や仕入先の絞り込みの是非を再検討
たとえば、さきほど事例として挙げた自動車は、1台当たり2万個から3万個もの部品が使われています。在庫を保有するということは、保管費用がかかるだけでなく、滅損・陳腐化リスクを負うことであり、販売代金を回収するまで資金コストを負っていることにもなります。このため、多くのメーカーは在庫圧縮に取り組んでいます(在庫圧縮の理由とメリットについては「在庫を適正水準に保ちたい」の「「在庫の圧縮」はもはや会社経営の常識に」を参照してください)。また、ボリューム・ディスカウントを受けるために一括購入を増やした結果、仕入先が少数に絞り込まれることになりました。在庫圧縮や一括購入により、コストダウン、キャッシュの節約に貢献できたことは間違いありません。

しかし、在庫圧縮を進めると、工場の被災により納期に時間のかかる部品や原材料まで被災し製造がストップしてしまうリスクが高まります。また、製品の被災により、出荷が不能になるリスクも高まります。被災するのは自社工場だけとは限りません。大規模な震災が起こった場合には、一極集中していた仕入先の部品メーカーが操業停止になり、一気に危機にさらされる恐れがあることにも注意が必要です。製品や納期に時間のかかる部品・原材料の保管倉庫の確保、代替仕入先の確保、代替仕入先からの仕入可能期間までの必要最低限の在庫保有について検討する必要があります。代替仕入先を確保する際には、代替仕入先の利用する部品・原材料の調達先が現行の仕入先が利用している調達先とかぶっていないか、川上の確認もしておきましょう。

(4)その他
上述した内容に加えて、工場が複数あるときに、いずれかの工場が被災した場合に備えて、他工場でも同一製品の製造を行う(あるいは、少なくとも製造が可能な状態にしておく)ことも検討すべきです(工場の分散)。ラインが重複するためコスト増になりますが、工場の分散により得意先への配送コストは圧縮され、非常時には被災した工場とは別の工場から製品を供給でき、製品の供給責任を果たすこともできます。

また、製造データや設計データの喪失に備えてデータを定期的にバックアップし、それを別ロケーションで保管することも重要です。なお、バックアップの詳細については「データが消失した場合に備えたい」の「BCPに欠かせないデータのバックアップ」を参照してください。

もちろん、リスクマネジメントの対象とすべきなのは「工場の被災」に限りません。「製品への異物混入」「本社、支社、事業所等の安全の確保」「全社的なデータの安全性の確保」「システムのハード障害や通信障害」「テロ」など多岐に渡ることは言うまでもありません。

こういったリスクマネジメントの一環として、最近は、災害発生時に適切な対応ができるよう、とるべき行動をあらかじめ整理し定めておく「事業継続計画(BCP)」が注目を集めています。

以下、BCPについて解説します。

効果的なBCPを策定する上で重要なこと

BCPとは、災害や事故などの予期せぬ出来事が発生した際に、限られた経営資源で事業活動を継続あるいは短期間で再開するため、事前に策定しておく行動計画のことです。従来からある防災計画が被害を最小限にするための事前対策であるのに対して、BCPは被害を受けてしまった後の事後対応力を備える取り組みと言えます。

(効果的なBCP策定のためのポイント)
効果的なBCPを策定できるかどうかは、万が一の災害の時に混乱を最小限に留めることができるか、壊滅的な打撃を受けるかの分かれ目となります。BCPを効果的に策定するために、次の点を検討しておきましょう。・・・

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BCPの効果が発揮された例、BCPが機能しなかった例

BCPの効果が発揮された具体的な例としては、下記のようなものがあります。
・東日本大震災で被災した会社が、BCPに基づき、遠方の同業者と有事の際に部材を融通しあうことについての取り決めを事前に締結していたため、迅速な事業再開ができた。
・津波により、自社の施設が全壊した会社が、BCPにより衛星電話を保有していたことから、すぐに施設の修理業者と連絡をとることができ、復旧が早まった。また、衛星電話で官公庁や顧客とも連絡がとれ、自治体や顧客の行う復旧作業にも参加することができた。
・地震により、施設や設備に甚大な被害を受けたメーカーが、・・・

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被災直後は多くの会社が「業績への影響は精査中」と開示

工場等が災害に見舞われた場合、どうしても直接的な被害への対応ばかりに目が行ってしまいがちですが、上場会社であれば、・・・

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「重要な災害」に該当すれば臨時報告書を提出

有価証券報告書の提出会社であれば、重要な災害が発生した場合に臨時報告書の提出が必要になることがあります。ここで、何をもって「重要な災害」と考えるかですが、・・・

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決算日後に発生する損失であっても決算に織り込む

会社は災害によって大きな損失を受けることになりますが、会計上はこの損失をどのように処理すればいいのでしょうか。この点については、・・・

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