ROEの分解式。米国の化学会社デュポンが経営分析に使っていたためこう呼ばれる。
ROE(Return On Equity=株主資本利益率)は「純利益 ÷ 自己資本」により算出されるが、デュポン式ではこれを下記のように分解する。
ROE=(純利益/売上)×(売上/資産)×(資産/自己資本)
※「売上」と「資産」は分母と分子に1つずつあるため、これを相殺すれば「純利益/自己資本」が残り、一般的なROEの計算式と等しくなる。
伊藤レポートで、グローバルな投資家と対話する際の最低ラインとして、「8%」を上回るROE(Return On Equity=株主資本利益率)に各企業はコミットすべきとされたことなどにより、ROEの目標値を設定する上場企業が相次いでいるが、こうした中、「ROEを高めるには分母を小さくすればいい」という声をよく耳にするようになった。
確かに、配当を増やすか自己株式を取得することにより自己資本を減少させれば、ROEは上昇することになる。ただ、そもそもROE向上に関する最近の議論の趣旨は日本企業の「稼ぐ力」のアップにあるはずであり、株主還元のみによってROEが上昇したとしても、稼ぐ力が変わっていなければ本末転倒と言える。
このように株主還元に注目が集まるのは、上述のとおりROEが「純利益 ÷ 自己資本」という“割り算”によって算出されるとの理解が一般的になっているためである。しかし、株主還元ばかりに頼ったROEの向上という思考に陥らないためにも、経営陣にはデュポン式、すなわち“掛け算”によるROEの算出をお勧めしたい。
デュポン式における「純利益/売上(売上高純利益率)」は稼ぐ力(売上に対してどれくらい利益があるか)を示す(東証第一部・第二部の平均は・・・
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