確立された既存市場の秩序や構造を劇的に変え、時には市場そのものを消滅させてしまうほどのインパクトを持つイノベーションのこと。破壊的イノベーションは優良企業を衰退させ、場合によっては倒産に追い込む可能性がある。
破壊的イノベーションの典型例として、しばしばデジタルカメラがアナログカメラ市場を破壊したケースが取り上げられるが、破壊的イノベーションは製造業のみならず、サービス業を含むどの業界にも起こり得る。IT企業による決済サービスへの進出(2014年5月27日のニュース「金融業界が真に恐れるべきライバル」参照)、ピア・ツー・ピア・レンディングなどは、金融業界における破壊的イノベーションの端緒となる可能性があり、また、配車サービスを展開するUberの革新的なビジネスモデルは、タクシー業界にとっての破壊的イノベーションとなり得る(2015年9月28日のニュース「“オンデマンド・エコノミー”ビジネスは日本で普及する?」参照)。
破壊的イノベーションに対し、製品やサービスの改良や品質向上によるイノベーションを「持続的イノベーション」と呼ぶが、世界中のビジネススクールの教科書に載っている「カイゼン」という言葉に象徴されるように、日本企業は基本的に持続的イノベーションにより成長してきた。ただ、それは日本企業の良さであるとともに、変化の激しい時代においては弱点にもなりかねない。経営陣が持続的イノベーションばかりに気をとられ、自社に忍び寄る破壊的イノベーションの兆候に気付かない(あるいは意図的に目をつぶる)のであれば、いずれ破壊的イノベーションを仕掛ける新興企業に屈する時が来るかもしれない。
特に、過去の成功体験を忘れられない優良企業、独占的な市場に安住している企業、規制に守られた企業の経営陣ほど持続的イノベーションに固執し、破壊的イノベーションを受け入れにくい傾向がある。なぜなら、破壊的イノベーションは自社の既存のビジネスモデルを破壊しかねないからだ(これが、ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授により提唱された「イノベーションのジレンマ」である)。破壊的イノベーションの多くが、既得権益を持たない新興企業によってもたらされる理由はここにある。
持続的イノベーションから逃れられない経営陣の目を破壊的イノベーションにも向けさせる役割が社外取締役に期待されているが、そうは言っても、・・・
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