元々は、上司が部下の業務の微細なところまで指示・監督し、部下の自主性を全く尊重しないようなマネジメント手法のことを指すネガティブな言葉だが、最近はコーポレートガバナンスの世界でもしばしば使われている。
そのきっかけとなったのが、コーポレートガバナンス・コードが打ち出した「攻めのガバナンス」の姿勢だ。同コードが導入されたのは2015年6月1日だが、その前の3月5日に公表されたコーポレートガバナンス・コード原案には、同コードが「経営陣が結果責任を問われることを懸念して“リスク回避”的な方向に偏ることがないよう「攻めのガバナンス」の実現を目指している」ことが明記されていた(原案の2ページ~。「本コード(原案)の目的」の「7」)。この記述は現在の正式なコーポレートガバナンス・コードの本文からは削除されているが(「資料編」として末尾には添付)、同コードが持つこの精神が消えたわけではない。これは現コードの随所に表れている。例えば、基本原則4の「考え方」には、経営判断の失敗に伴い経営陣が損害賠償責任を負うかどうかを左右する「意思決定過程の合理性」を担保する機能が同コードにはある旨が明記されているほか、補充原則4-3②は、取締役会が単なる“リスク回避”の場にならないよう釘を刺している。
補充原則4-3② コンプライアンスや財務報告に係る内部統制や先を見越したリスク管理体制の整備は、適切なリスクテイクの裏付けとなり得るものであるが、取締役会は、これらの体制の適切な構築や、その運用が有効に行われているか否かの監督に重点を置くべきであり、個別の業務執行に係るコンプライアンスの審査に終始すべきではない。 |
こうした攻めのガバナンスを実現するうえで、マイクロマネジメント思考を持つタイプの役員はボトルネックになりかねない。取締役会で“うるさ型”と言われ、大胆な経営戦略や斬新な新規事業を、重箱の隅を突いたような「リスク」を強調することで否定してきた役員は、・・・
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