この時期、従業員の昇降格を予定している会社は多いが、まれに、昇格したためにかえって賃金が下がってしまうということが起こりうる。この現象が「昇格減給」と呼ばれるものだ。一般社員が管理監督職に昇格したことにより残業代が支払われなくなり、従来より給料が減ってしまうというのが典型例である。ある意味で“制度設計上の不具合”とも言えるが、そもそもこのようなことは法的に許されるのだろうか。
基本的に会社は「合理的な理由」に基づいて社員を昇格させたり降格させたりすることができる。これが人事権(会社が有する「経営権」に属する権限の一つ)の行使であり、就業規則等に記載されていなくても(明文化しておく方が望ましいが)認められている。また、昇降格とはつまり「職務の内容や責任の程度が変わる」ことであるため、それに連動して給料が増えたり減ったりするのは当然であり、それが労働契約(適正に制定された就業規則を含む)に則ったものであるならば裁判所も是認しているところだ。ちなみに、労働基準法第91条(*)で「減給は10%を超えてはならない」旨を定めているが、これは制裁としての「減給」について制限を設けたものであり、昇降格に伴う減給とは関係がない。
* 労働基準法第91条を抜粋すると次のとおり。
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
結論として、「昇格減給」は適法ということになる。ただし、・・・
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