企業のバランスシート上、現金および現金等価物(預金、短期の有価証券)から有利子負債(借入金・社債)を控除した値が正となっている状況のこと、あるいは当該控除後の金額のことをいう(負の場合は「ネット負債」)。ネットキャッシュとなっていれば、有利子負債がないか、あるいは有利子負債があったとしても、それをすべて返済した後も手元にキャッシュが残るので、財務が健全な状況にあると言える。ネットキャッシュ企業では、大きな金額となる設備資金はともかく、運転資金の資金繰りで苦労することはない。また、ネットキャッシュ企業は金融機関等の債権者にとって信用力が高いことから、設備資金の調達が必要な場合も、低い金利で有利子負債を調達することができる。
短期の有価証券 : 「流動資産」の部に計上される有価証券。売買目的の有価証券や1年内に償還される債券などが該当する。
有利子負債(借入金・社債) : 返済までに利子の負担が必要となる負債。買掛金、支払手形、未払金は利子に負担が必要ないことから、有利子負債に含まれない。
設備資金 : 企業が建物や機械などの生産設備に投下する資金のこと
東証1部上場企業(金融業を除く)を例にとると、ネットキャッシュ企業の割合は、1990年時点では39.7%に過ぎなかった。しかし、四半世紀かけて多くの企業で借入金の返済が進んだ結果、2015年には半数以上(56.7%)がネットキャッシュ企業となった。56.7%という比率は、過去最高の水準である。
不確実性が増した現代ではネットキャッシュは多ければ多いほど望ましいように見えるが、必ずしもそうとは言えない。なぜなら、・・・
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