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(新用語・難解用語)コングロマリット・ディスカウント

コングロマリット(conglomerate)とは、異なる分野の事業を複数同時進行で営む企業(「複合企業」とも呼ばれる)のことを指す。原子力、航空機エンジン、医療機器、家電製品、金融事業などを行うGE(ゼネラル・エレクトリック)社は世界最大のコングロマリットとされる。また、それぞれ銀行、証券、保険などの業務を行う子会社を持株会社の傘下に持つ金融グループもコングロマリット(金融コングロマリット)の1つである。

コングロマリットには、経営資源を複数の事業に分散して投下することでリスクを低減するというメリットがある一方で、好調な事業と不振な事業が共存する場合、不振事業に足を引っ張られる形で、好調な事業の業績等が当該企業の株価に十分反映されず、株価が割安(ディスカウント)になりかねないというデメリットがある。このデメリットの方が「コングロマリット・ディスカウント」である。

コングロマリット・ディスカウントを解消したいというニーズは企業側にも株主側にもある。具体的な手法としては、下図のように、好調な事業(青色の四角部分)と不振な事業(ピンク色の四角部分)を切り離して別会社とする、あるいは親子関係を解消することが考えられるが、この場合にネックとなるのが税負担だ。

図1:GOOD事業とBAD事業の会社分割
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図2:子会社株式の現物配当
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組織再編には資産の移転が伴う。例えば図1では、元々あった会社(GOOD事業とBAD事業を持つ会社)が、新たに設立されたBAD会社に対しBAD事業を移転したことになる。法人税法では、こうした資産の移転は基本的に課税対象(資産の取得価額よりも移転価額が高ければ、その差額が課税対象となる)とするという考え方をとっている。ただ、組織再編のたびに税金がかかるとなると、企業が必要な組織再編を躊躇してしまう可能性があることから、法人税法では「組織再編税制」という制度を設け、100%グループ内の組織再編や、共同事業を行うための組織再編であれば、資産の移転に課税を行わないことにしている。

ただ、上図の組織再編は、組織再編後に会社同士の資本関係がなくなるため「100%グループ内の組織再編」にも該当しなければ、元々異なる分野の事業を行っている以上「共同事業を行うための組織再編」にも該当しえない。つまり、現状では課税が避けられないということだ。

こうした中、これから政府内で始まる平成29年度税制改正を巡る議論では、・・・

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