金融庁が昨年(2015年)9月から「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」を開催しているのは周知のとおりだが、この会議の中でよく出てくる言葉が「フィデューシャリー・デューティー」だ。
フィデューシャリー(fiduciary)は「受託者」、デュティー(duty)は義務という意味であり、フィデューシャリー・デューティーは「受託者責任」と訳される。金融庁が平成26年9月に公表した「平成26事務年度金融モニタリング基本方針(監督・検査基本方針)」の中では、フィデューシャリー・デューティーは「他者の信認を得て、一定の任務を遂行すべき者が負っている幅広い様々な役割・責任の総称」と定義されていた(3ページ参照)。この定義を踏まえると、例えば医療行為における医師もフィデューシャリー・デューティーにおける「受託者」になりえるが(委任者は患者)、フォローアップ会議でフィデューシャリー・デューティーという言葉が使われる場合には、「受託者」とは資産運用の担い手、すなわち運用会社や年金基金を指す。
運用会社や年金基金にとっての「受託者責任」とは、スチュワードシップ・コードが求める「スチュワードシップ責任」とほぼ同義と考えればよい。スチュワードシップ・コードでは、スチュワードシップ責任を「最終受益者を含む顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任」と定義しているが(1ページ冒頭の「責任ある機関投資家」の諸原則 ≪日本版スチュワードシップ・コード≫ について 参照)、これがフィデューシャリー・デューティーにあたる。既にほとんどの機関投資家(運用会社や年金基金)がスチュワードシップ・コードの受け入れを表明しているため、実質的にフィデューシャリー・デューティーも受け入れていると言える。
フィデューシャリー・デューティーが注目を集めている大きな理由が、・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。