サステナブル・ストックエクスチェンジ・イニシアティブ(以下「SSEイニシアティブ」)とは、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)、責任投資原則(PRI)によって2009年に創設されたネットワーで、証券取引所が、投資家、規制当局、企業と協働しながら、サステナブル投資の促進、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する企業の透明性や企業の長期的なパフォーマンス向上のためにどのような取り組みを行うべきかを(証券取引所同士で)自主的に議論し、学ぶ場である。これまで、ニューヨーク証券取引所、ナスダック、ロンドン取引所、ドイツ証券取引所、シンガポール証券取引所をはじめとする67の取引所が参加していたが、昨年(2017年)11月30日には、日本取引所グループも68番目の参加者としてSSEイニシアティブに参加(参加取引所のリストはこちら)することを表明している(東証のリリースはこちらの最終ページ参照)。
国連貿易開発会議(UNCTAD) : 発展途上国の経済開発促進と南北問題(開発途上国と先進国の間の経済的格差から生じる政治問題や経済問題の総称。先進国が北半球に、開発途上国が南半球に多く存在することからこのように呼ばれる)の経済格差是正のために国際連合が設けた会議で、国際連合の補助機関である。UNCTAD とは「United Nations Conference on Trade and Development」の略。
国連グローバル・コンパクト(UNGC) : 1999年のダボス会議でアナン国連事務総長(当時)が提唱したイニシアティブ。人権・労働権・環境・腐敗防止に関する10原則を順守し実践するよう要請している。
国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI) : 世界各地の銀行・保険・証券会社等と政策者、規制当局と協調し、経済的発展とESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮を統合した金融システムへの転換を進めるパートナーシップ。「UNEP FI(United Nations Environment Programme – Finance Initiative)」のUNEP(=国連環境計画)とは、1972年ストックホルム国連人間環境会議で採択された「人間環境宣言」および「環境国際行動計画」の実行機関として同年の国連総会決議に基づき設立された国連の補助機関である。
責任投資原則(PRI) : 経済、環境、社会の持続性に配慮した投資手法であり、具体的には、経済的なパフォーマンスに加え、ESGに配慮して投資先を選定することと言える。サステナブル(sustainable)とは「持続可能」を意味する。ちなみに、サステナブル投資を日本で普及させる活動を行うNPO法人 日本サステナブル投資フォーラムは、サステナブル投資を、1. 地球と社会の持続可能性に配慮した投資であること、2. 原則1の投資プロセスや社会的な効果を資金の供給者に対して開示していること、の2つの原則を満たすものとしている。
これまでも日本取引所グループでは、ESG指数に連動したETFの上場を認めたり、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として、また、従業員の健康管理に経営的な視点から戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定したりしてきたほか、さらに昨年からは、東京証券取引所が実施する「企業価値向上表彰」の審査にESGに対する認識等を評価尺度として取り入れた「価値協創ガイダンス」を組み込むなど、ESG投資の促進に取り組んできたが、SSEイニシアティブに参加したことで、自ら設定したコーポレートガバナンス・コード原則2-3【社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題】(下記参照)に一層積極的に取り組む姿勢を明確にしたと言える。
ESG指数 : 企業をこのESGの観点から評価し、その評価が高い企業によって構成される株価指数(株式市場の動きを示す指標のこと。日経平均株価や東証株価指数は代表的な株価指数である)のこと。
ESG投資 : ESGに優れた企業に投資すること。
【原則2-3.社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題】 上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ―(持続可能性)を巡る課題について、適切に対応を行うべきである。 |
もっとも、サステナビリティに関しては、・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。