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(新用語・難解用語)マルス条項

かつて不祥事を起こした企業の(元)役員が過去の報酬を返上するというケースが見られたが、こうした報酬返還の仕組みを「制度化」したのがクローバック(条項)だ。役員報酬のうち、中長期で支払われる業績連動型報酬の割合を高めている日本企業では、経営陣が業績連動報酬を獲得するために過度にリスクをとったり、不正に走ったりすることがないよう、クローバック条項を導入するための定款変更議案を株主総会に諮ったり、役員報酬の決定方針の中にクローバック条項を盛り込んだりするところが増えて来た。また、機関投資家側でも、株主総会で「株主提案」としてクローバック条項の導入が提案された場合には当該議案に賛成する旨を議決権行使基準で明示するところも出て来ている(2020年11月16日のニュース「大和AMが議決権行使基準改定 エンゲージメントによって賛否逆転も」参照)。

こうした中、最近クローバック条項とともに目にする機会が増えたのが「マルス条項」だ。マルス条項とは、主に中長期インセンティブを「支給前」に減額、あるいは消滅させる取り決めのこと。一見するとクローバック条項(例えば業績に連動し支給された報酬を、業績結果の修正に伴い強制的に返還させる取り決め)と似ているが、クローバック条項が「既に支給済の報酬」を返還させる仕組みであるのに対し、マルス条項は「最終的な支給が留保されている(=まだ支給されていない)報酬」を対象としている。このため、マルス条項には、対象とする報酬の減額・消滅が容易であるという特長がある。マルス条項は基本的に「最終的な支給が留保されている報酬」を対象にしているということで、支給するまでに時間的余裕がある中長期インセンティブに適用されるのが通常である。

一方、クローバック条項が対象とする報酬は既に本人に費消されていることなどにより返還の実現が困難な場合がある。さらに、クローバック条項を発動した場合、支払った報酬に対して課された税金の問題・・・

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