コロナ禍の中、取引先が突然倒産するということも起こり得る。こうした事態に備えるために欠かせないのが貸倒引当金の計上だ。一方で、貸倒引当金の計上は会社の利益を引き下げることになるだけに、その計上にあたっては難しい経営判断を迫られることになる。
こうした中、企業会計基準委員会(ASBJ)は、今年(2021年)の夏から貸倒引当金に関する会計基準の改正を進めている。これにより、貸倒引当金の算定方法は大きく変わる可能性がある。
今回の改正は、日本の会計基準を国際的に整合性のあるものとするため、後述する「予想信用損失モデル」に基づく金融資産の減損に関する会計基準の開発が行われている。ここでいう「金融資産の減損」とは貸倒引当金の計上と理解すればよい。
現行の日本の会計基準では、下表のとおり、債権を貸倒れの確率が低い順に「一般債権」「貸倒懸念債権」「破産更生債権等」の3つに分類したうえで、それぞれ右記の方法により貸倒引当金を算定している。
債権の区分 | 貸倒引当金の算定方法 |
一般債権 | 過去の貸倒実績率など合理的な基準により算定 |
貸倒懸念債権 | ・担保及び保証のない部分のうちの必要額(財務内容評価法) 又は ・割引現在価値(キャッシュ・フロー見積法) |
破産更生債権等 | 担保及び保証のない部分の全額(財務内容評価法) |
割引現在価値 : 将来受け取れると見込まれる利益またはキャッシュフローが、今現在はいくらの価値を持つかを表すもの。(n年後の資産の価値)÷(1+割引率)ⁿにより計算される。割引率とは、将来の価値を現在の価値に直すために用いる率のことで、利回りなどを考慮して仮定の数値を設定する。例えば割引率を5%とすると、1年後の1万円の現在の価値は「1万円÷(1+0.05)=9,524円」となる。
これに対し、国際財務報告基準(IFRS)で採用されている貸倒引当金の算定方法が、「予想信用損失モデル(*)」だ。
予想信用損失モデルでは、下表のとおり、・・・
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