変化の激しい時代を会社が生き抜くために、取締役は時に大胆な経営判断を下さなければならないこともある。また、会社を別次元へと成長させるには、社運をかけた新規事業を打ち出す必要もあるだろう。
ただ、こうした大きな決断にはリスクも伴う。結果としてそれが誤りで、会社に損失をもたらしてしまうことも十分にあり得る。このような場合、取締役として気にしておきたいのが善管注意義務違反だ。
取締役には、会社との委任関係に基づいて「善良な管理者の注意」をもって職務を遂行する義務、すわなち「善管注意義務」がある。善管注意義務を怠って会社に損害が生じた場合には、取締役はこれを賠償する責任を負うことになる。
ただ、会社を経営していくうえで経営判断のミスは付きものであり、それに対していちいち善管注意義務違反を問われるとなれば、取締役は委縮して思い切った経営ができなくなる。そこで、取締役の経営判断が善管注意義務に違反するかどうかを判定する基準が必要になる。これが「経営判断の原則」である。
経営判断の原則とは、役員の経営上の判断が善管注意義務に違反するかどうかの判定は、経営判断の前提となった事実の認識について「不注意な誤りがなかったかどうか」、また「その事実に基づく意思決定の過程が通常の企業人として著しく不合理でなかったかどうか」という点から行うべきである、とするもの。具体的には、・・・
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