2021/09/30 2021年9月度チェックテスト第8問解答画面(正解)

正解です。
株価連動型賞与には、支給後に株価が下がった場合、取締役が「頑張っても仕方ない」というマインドになりかねないという問題があります(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2021年9月15日 株価連動型賞与に対する投資家の評価(会員限定)

2021/09/30 【役員会 Good&Bad発言集】内部通報制度の設計(1)(会員限定)

<解説>
人事部門を窓口とすることの是非

2021年9月10日のニュース『取締役全員が「公益通報対応業務従事者」として刑事罰の対象となる恐れ』でお伝えしたとおり、2020年6月に公益通報者保護法の一部を改正する法律(以下、改正法)が成立・公布され、2022年6月1日から施行されます(公益通報者保護法の改正内容の詳細については2020年6月23日のニュース「CGコードの遵守状況に影響も 改正公益通報者保護法改正のポイント」も参照)。上場会社各社では、自社の内部通報制度を改正法に対応させるための準備に取り組んでいることと思われます。

内部通報制度の見直しにあたり注意したいのが、内部通報の「窓口」が適切かどうかです。「窓口」は「通報者」と「内部通報の仕組み」の最初の「接点」であり、「内部通報の仕組み」が動き出す「起点」でもあるところ、「どこ(だれ)を窓口にするのか」は内部通報の仕組みが適切に機能するかどうかを大きく左右するからです。消費者庁が2021年8月20日に公表した「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(以下、指針)は2021年4月28日から5月31日にかけてパブリックコメント手続きに付されており、消費者庁は寄せられたコメントに対して「パブリックコメント手続において寄せられた意見等に対する回答」(以下、パブコメ結果)において消費者庁としての考え方を記載しています。

パブコメに先立ち、消費者庁が2021年4月21日に公表した「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会 報告書」(以下、検討会報告書)では、「人事部門に内部公益通報受付窓口を設置することが妨げられるものではない」としつつも「人事部門に内部公益通報をすることを躊躇(ちゅうちょ)する者が存在し、そのことが通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることにも留意する必要がある」(検討会報告書7ページ)と記載されていました。

これに関してパブコメでは、「人事部門に公益通報窓口を設置することは明確に避けるべき、もしくは禁止と記載すべき」との意見が多く寄せられていました。これは、「人事権限を有する人事部門は、不利益取り扱いの実施主体そのものとなる可能性があるため、通報者からすると通報を躊躇するのが通常である。通報窓口の独立性の観点からも、人事権限を有する人事部門と通報窓口は切り離すべきである。」「人事権を有する人事部門に公益通報窓口を設置することは労働者・従業員にとって、通報をためらう大きな要因の一つである。人事権での報復の恐れから通報をためらい、人事権が見え隠れする窓口を積極的に利用するとは思えない。」といったことを理由とするものです。一方で、「人事部門に各種ハラスメントの情報受付窓口・調査担当を置いている事業者が多くあり、同様に守秘義務を負っている。原案の記載内容では、人事部門に公益通報受付窓口を置くことを躊躇する事業者が現れる恐れがあり、事業者による選択が狭められる懸念があると考える。」として、検討会報告書の「「人事部門に内部公益通報をすることを躊躇(ちゅうちょ)する者が存在し、そのことが通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることにも留意する必要がある」部分を削除するよう要請するコメントも見受けられました。

消費者庁では「検討会報告書では、「従事者の定め及び内部公益通報対応体制の整備等に当たり、事業者がとるべき措置の具体的な内容は、事業者の規模、組織形態、業態、法令違反行為が発生する可能性の程度、ステークホルダーの多寡、労働者(公務員も含む。)及び役員(以下「労働者及び役員」という。)や退職者の内部公益通報対応体制の活用状況、その時々における社会背景等によって異なり得る」(P4)と記載されています。そのため、各事業者におかれては、自組織の状況を踏まえ、経営判断に基づき各事業者にとって現実的かつ最適な措置を取ることが必要と考えます。」との考え方を示し、寄せられたコメントの内容も踏まえながら、今後策定・公表する「指針の解説」に反映させていくとしています。

上場会社の経営陣は、「自組織の状況を踏まえ、経営判断に基づき各事業者にとって現実的かつ最適な措置」として、窓口をどうするのかを議論すべきと言えます。

内部公益通報窓口と顧問弁護士

内部通報の窓口は1つでは不十分であり、複数の窓口を設置しておくべきです。なぜなら窓口が1つしかない場合、当該窓口に強い影響力を持つ人物や組織の不正を通報しようとした者が、通報を躊躇する可能性があるからです。また、コーポレートガバナンス・コードの補充原則2-5①にも規定されているとおり、社外取締役と監査役による合議体を窓口とする等経営陣から独立した窓口の設置が必須となります。

補充原則2-5①
上場会社は、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置(例えば、社外取締役と監査役による合議体を窓口とする等)を行うべきであり、また、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律を整備すべきである。

さらに、社外の通報窓口も設置すべきです。たとえ社内窓口が複数あったとしても、通報者がどの窓口も信用を置けないと思う可能性があるからです。社外窓口としては、内部通報の窓口業務を受託する民間の専門機関や法律事務所などが考えられます。

この点、報告書11ページでは顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とすることについて下記のように記載されています。

いわゆる顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とすることについては、顧問弁護士に内部公益通報をすることを躊躇(ちゅうちょ)する者が存在し、そのことが通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることにも留意する必要がある。また、顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とする場合には、その旨を労働者及び役員並びに退職者向けに明示するなどにより、内部公益通報受付窓口の利用者が通報先を選択するに当たっての判断に資する情報を提供することが望ましい。

パブコメでは、「会社の顧問弁護士は、公益通報対応業務に関与させない措置を指針に、明記してほしい」「顧問弁護士は会社経営陣との関係が強いのが通例であり、一般社員にもそのように認識されている。通報窓口に対する信頼確保のため顧問弁護士が通報受付窓口となるのは避けるべきである。」「外部窓口としての顧問弁護士が通報を受け付けて、通報対象事実に対応する場合、通報対象者あるいは事業者に対して責任追及がなされることが考えられる。外部窓口として対応した顧問弁護士は、利益相反や守秘義務の観点から、爾後いずれの立場としても対応することが困難となる。」といったコメントが多く寄せられていました。

一方で「人事部門と同様、通報受付を外部委託したとしても、通報者の秘密が守られ、公益通報受付窓口としての公正性・中立性の確保、利益相反防止措置がなされていれば、通報者にとって通報を躊躇する理由がないため。必要に応じて、そのような措置がとられていることを労働者等に周知すれば足りるはずである。原案のように消極的に記載することにより、事業者の通報受付体制の選択肢をみだりに狭めるべきではないと考える。」といったコメントも複数寄せられていました。

消費者庁では、人事部門を内部通報窓口とすることの是非と同様、「検討会報告書では、「従事者の定め及び内部公益通報対体制の整備等に当たり、事業者がとるべき措置の具体的な内容は、事業者の規模、組織形態、業態、法令違反行為が発生する可能性の程度、ステークホルダーの多寡、労働者(公務員も含む。)及び役員(以下「労働者及び役員」という。)や退職者の内部公益通報対応体制の活用状況、その時々における社会背景等によって異なり得る」(P4)と記載されています。そのため、各事業者におかれては、自組織の状況を踏まえ、経営判断に基づき各事業者にとって現実的かつ最適な措置を取ることが必要と考えます。」との考え方を示し、寄せられたコメントの内容も踏まえながら、今後策定・公表する「指針の解説」に反映させていくとしています。結局のところ、上場会社の経営陣は、「自組織の状況を踏まえ、経営判断に基づき各事業者にとって現実的かつ最適な措置」として、社外窓口をどうするのかを議論すべきと言えます。

このように顧問弁護士が内部通報の社外窓口として適切かどうかは議論の余地があるところですが、仮に顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とする場合には、「その旨を労働者及び役員並びに退職者向けに明示するなどにより、内部公益通報受付窓口の利用者が通報先を選択するに当たっての判断に資する情報を提供することが望ましい」とされています(報告書11ページ)。いずれにしろ、通報後に適切に取り扱われることを担保するため、通報があれば通報の事実が監査役や社外役員にも共有される仕組みも有効と言えます。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役A:「人事部が内部通報の窓口だと、人事権による報復を恐れて通報をためらう者がいるかもしれません。」
コメント:Aの発言は人事部門を内部通報窓口にすることの是非という論点を指摘できたGood発言です。単に論点を指摘するだけでなく、内部通報窓口を増やすよう対案を出せていれば、よりGoodでした。また、Y社では、この3年間の内部通報実績がゼロ件だったことと、通報窓口が人事部門になっていることに関連がある可能性について問題提起できていれば、さらにGoodでした。

監査役C:「外部の法律事務所と言っても、会社の顧問弁護士じゃないですか。顧問弁護士ではなく、今まで取引のない独立した弁護士に依頼してはいかがでしょうか。」
コメント:Cの発言は顧問弁護士を内部通報窓口にすることの是非という論点を指摘できたGood発言です。Aと異なり単に論点を指摘するだけでなく、独立した弁護士を社外窓口に起用するよう対案を出せている点もGoodです。

BAD発言はこちら

取締役B:「確かに社内窓口は人事部のままですが、今回、社外窓口として法律事務所が加わったので、人事部への通報をためらう者には社外窓口を利用してもらえばよいと考えています。」
コメント:社外窓口は従業員等通報者にとって普段はまったくなじみがない先であることから通報へのハードルがあるのも事実です。『人事部への通報をためらう者には社外窓口を利用してもらえばよい』というBの発言は内部通報制度が本当に機能するかどうかを真剣に考えたうえでの発言とは言えず、Bad発言です。

取締役D:「顧問弁護士は会社のことをよく理解してくれています。会社のことを何も知らない弁護士が顧問弁護士より適切に対応できるとは思えません。」
コメント:内部通報の社外窓口としての適格性は「会社のことをよく理解してくれているかどうか」ではなく、「通報者に『窓口』として信頼してもらえるかどうか」です。顧問弁護士が内部通報の社外窓口として適任であると考えているのであれば、「当該弁護士は会社の顧問弁護士である旨を労働者及び役員並びに退職者向けに明示するなどにより、内部公益通報受付窓口の利用者が通報先を選択するに当たっての判断に資する情報を提供してはどうか」といった方策を提案すべきです。Dの発言は内部通報窓口としての顧問弁護士の適格性についての議論への理解を欠いたBad発言です。