2025/07/31 2025年7月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
執行役員制度を採用している会社では、上場会社であろうとなかろうと、株主総会での承認を経ずに執行役員を選任することができます(株主総会の関与は不要)。

こちらの記事で再確認!
2025年7月2日 株主提案による経営介入の限界(会員限定)

2025/07/30 【役員会 Good&Bad発言集】IR体制・IR活動

上場会社I社の取締役会において社外取締役よりIR体制・IR活動について質問があり、IR担当者(総務担当者が兼任)が現状について説明を行いました。これに対して次の4人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「当社では、投資家からIRに関する個別面談の要請があっても、すべて「公平性」を理由に対応しない方針です。この方針は、経営者仲間から『投資家との対話を避けるノウハウ』として教えてもらったものです。」

取締役B:「個別面談をしない代わりに、当社では『顔の見える関係を大事にしたい』との考えから、対面開催のみの決算説明会を定期的に開催しています。せっかく参加していただいた投資家の気持ちに応えるため、公表資料に加え、対面参加者限りの独自資料も配布するようにしております。この独自資料がとても喜ばれており、参加者とは良い関係を築けていると考えています。」

社外取締役C:「投資家から社外取締役との面談要請があっても多忙を理由に一律に断っていたとは初めて聞きました。確かに多忙は事実ですが、投資家との対話には積極的に臨みたいと思います。」

取締役D:「2025年7月に東証の企業行動規範が改正されました。当社でも、形式的で構わないのでIR担当役員やIRの専門部署・専任担当者を設置するようにしましょう。」

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2025/07/30 【役員会 Good&Bad発言集】IR体制・IR活動(会員限定)

<解説>
経営者コミュニティで伝授される「投資家との対話を避けるノウハウ」

東京証券取引所は2025年7月7日、有価証券上場規程等の一部改正を公表しました。今回の改正は、2025年7月22日より施行されています。

主たる改正点は、MBO(経営陣による自社買収)等に関連する企業行動規範の「遵守すべき事項」の見直し(2025年8月4日のニュース「東証、企業再編の利益相反対応を強化 MBO等の手続が厳格に」を参照)ですが、これに加え、上場会社に対し「株主および投資者との関係構築に向けて必要な情報提供を行うための体制(IR体制)を整備しなければならない」とする新たな義務が企業行動規範の「遵守すべき事項」に明記されました。

有価証券上場規程に新設された規定
(IR体制の整備)
第436条の5 上場会社は、株主及び投資者との関係構築に向けて必要な情報提供を行うための体制を整備するものとする。

今回の改正は、一部の上場企業がIR活動を実施せず、体制整備も不十分であるとの投資者からの指摘を受けたものであり、東京証券取引所としては、市場の信頼性を維持・向上させる観点から、情報開示体制の整備を制度的に促す措置となっています。もっとも、東証は「具体的な体制については、自社の企業規模や株主構成等を踏まえ検討いただくことが重要です。必ずしも、形式的にIR担当役員やIRの専門部署・専任担当者の設置を義務づける趣旨ではございません。」としています。なお、本改正に伴い、従来の「決算内容に関する補足説明資料の公平な提供」は削除されました。

また、東証は2025年4月30日に公表した「IR体制の整備義務化に係る対応・留意点について」において、以下のとおり本件に関する「よくある質問と回答について」を公表しています。

よくある質問と回答について
Q IR体制の整備義務化に伴い、IR担当役員やIRの専門部署の設置も必須となるのか
A 具体的な体制については、企業規模や株主構成等を踏まえ、各社でご検討いただくことが重要です。投資者からは、IRに特化した専門部署を設けるなど、充実したIRを行うための体制の整備を期待する声も寄せられておりますので、投資者との対話も踏まえ、自社に必要な体制やその充実についてご検討ください。なお、上場制度上は、必ずしもIR担当役員やIRの専門部署の設置がなくても、義務に違反するものではございません。

Q IR活動の実施も義務化されるのか
A 今回の改正は、IR活動の実施を義務付けるものではございませんが、投資者からの期待を踏まえ、具体的なIR活動(例えば、説明会の開催などによる能動的な情報提供や、個別⾯談による双方向の対話等)に積極的に取り組むことが、投資者と信頼関係を構築していくうえでは重要です。なお、東証では、上場会社の投資者の目線を踏まえたIR活動等の充実が進むよう、2025年6月を目途に投資者の声を取りまとめ、ご紹介する予定です。

Q IR体制を整備していない場合には、措置の対象となるのか
A IR体制が全く整備されていない場合は、公表措置等の実効性確保措置の対象となる場合があります。

Q 既にIR体制を整備しているが、追加的な対応は必要か
A 既にIR体制を整備しており、その状況について、CG報告書の「IRに関する部署(担当者)の設置」の補⾜説明欄に記載している場合には、追加的な対応は不要です。(後略)

なお、IR体制が全く整備されていない場合には、公表措置などの実効性確保措置の対象となる可能性があるとされており、上場企業には一定の対応が求められます。

この方針に沿った形で、東証は施行日である2025年7月22日に「IR体制・IR活動に関する投資者の声」を公表しました。この資料には、実際の投資者から寄せられた具体的な意見が数多く掲載されており、今後のIR活動の方向性を示唆するものとなっております。

たとえば、「コンサルティング会社のサポートなどを受けてIR資料の⾒栄えは良い一方で、個別面談などを通じて、経営計画の内容などを深堀していくと、中身の説明が伴っていない事例も⾒られる。投資家としては⾒栄えの良い資料を求めているわけでは決してなく、むしろ経営陣や経営陣と同じ目線をもったIR部門が、⾃社の経営に関する考え⽅やビジョンを⾃らの⾔葉で発信してくれることを期待している。それを可能とするようなIR体制の整備をこの機会に検討してほしい。」「株主・投資者と継続的な信頼関係を構築していくためには、IR活動を通じて得られた投資家からのフィードバックが、きちんと経営課題として検討され、必要な改善が図られていくことが重要。情報発信のための体制に留まらず、IRを経営に活かしていくための体制の整備も期待される。」などの声が掲載されています。

加えて「IR体制・IR活動に関する投資者の声」では、社外取締役との対話に関して次のような意見も紹介されています。「最近は、社外取締役との対話の機会は提供してもらえても、統合報告書などコンテンツ作りが目的になっているのではと疑われるような事例も⾒られる。建設的な対話の難しい大人数での開催だったり、事務局が用意した質問への回答がメインで、実際の質疑応答の時間が殆どない事例もあった。上場会社としても、建設的な対話に繋がるよう工夫すべき。」「対話のアジェンダに関わらず、社外取締役との面談を受け付けていない企業は多い。社外取締役の意向を確認するまでもなく、担当部に断られてしまう。」「投資家が、取締役会やガバナンス体制の実効性等を理解・評価するうえで、社外取締役との対話は非常に重要。社外取締役は、本来、少数株主の⽴場を代弁すべき存在であり、積極的に面談に応じることが期待される」「経営者やIR部門によるIR活動に加えて、経営を監督し、一般株主の⽴場を代弁する役割を担う社外取締役とのコミュニケーションを期待する」声も寄せられているとして、例えば、以下のようなアジェンダについては、その実効性を評価する観点から、社外取締役との対話が重要となる場合があるとしています。

社外取締役との対話が重要となる場合
・取締役会において、経営上の重要課題等に関して実効的な議論がなされているか
・コーポレート・ガバナンス体制の実効性や、少数株主保護のために必要とされる支配株主からの独⽴性が確保されているか

また、IR説明会・個別面談に関しては「未だに決算説明会をはじめとするIR説明会を対面開催のみとしたり、公表資料に加え、対面参加者限りの資料を配布するなど、投資者への公平な情報提供を意図的に⾏っていない企業も⾒られる。」「一部の経営者コミュニティで、投資家との対話を避けるノウハウが共有されているようだ。面談に前向きな企業が増えている中、合理的な理由なく断る企業が目⽴っている。」「フェアディスクロージャーを理由として個別面談に応じない企業も存在するが、中⻑期的な経営戦略や資本政策への理解を深め、投資者の⾒⽅を伝えるために面談を依頼するのであり、インサイダー情報を聞きたいわけではない。」といった苦言も呈されています。

特に注目されるのは、「投資家との対話を回避するためのノウハウが、一部の経営者間で共有されている」との指摘です。例えば、「IR体制・IR活動に関する投資者の声」でも指摘されている「フェアディスクロージャーを理由として個別面談に応じない」(フェアディスクロージャーについてはこちらのニュースも参照)というノウハウ以外にも、サイレント・ピリオドを長めに設定する、経営陣や役員への直接的なアクセスを制限する、「すでにスケジュールが埋まっているため、面談の調整は困難である」として面談を断る、あるいは「長期保有を基本スタンスとする投資家を優先的に対応する」との方針を掲げて選別的に面談を制限する、「個別対応は行わず、有価証券報告書や決算説明資料をご参照ください」といった案内にとどめ、直接的な対話を避ける等の対応は、現実に複数の上場企業で用いられている模様です。こうした対応策が企業間で“知見”として共有されているという事実については、投資家との建設的な対話を重視する市場の期待との乖離を感じざるを得ず、驚きを禁じ得ません。

サイレント・ピリオド : 上場企業が、決算数値等の漏洩防止および公平性の確保の目的から、決算発表前の一定期間を「決算関連情報のIR自粛期間」として社内ルールで定める期間

その他、東証は本改正に伴い2025年7月に「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領」を改訂し、「IRに関する活動状況」の「IRに関する部署(担当者)の設置」における補足説明欄においてに、「IR担当部署(担当部署名、専任の担当者の有無など)及びIRに関する窓口 (IR担当部署の連絡先(電話番号やメールアドレス))」等を記載することが望まれる旨を明示しています。CG報告書の改訂にあたり更新漏れがないようにしましょう。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

社外取締役C:「投資家から社外取締役との面談要請があっても多忙を理由に一律に断っていたとは初めて聞きました。確かに多忙は事実ですが、投資家との対話には積極的に臨みたいと思います。」
コメント:投資家との対話を嫌がる社外取締役が多い中、取締役Cの発言は、自身の役割を理解し責務を果たそうとするものでありGOODです。

BAD発言はこちら

取締役A:「当社では、投資家からIRに関する個別面談の要請があっても、すべて「公平性」を理由に対応しない方針です。この方針は、経営者仲間から『投資家との対話を避けるノウハウ』として教えてもらったものです。」
コメント:取締役会の場で『投資家との対話を避けるノウハウ』を語るとは言語道断であり、『誠実性』という経営者としてもっともな大事な資質が欠けていることを感じさせるBAD発言です。投資家が対話(個別面談)を求めるのは、『中⻑期的な経営戦略や資本政策への理解を深め、投資者の⾒⽅を伝えるため』であり、決してインサイダー情報を聞きたいわけではなく、「公平性」は個別面談を断る理由にはなりえません。

取締役B:「個別面談をしない代わりに、当社では『顔の見える関係を大事にしたい』との考えから、対面開催のみの決算説明会を定期的に開催しています。せっかく参加していただいた投資家の気持ちに応えるため、公表資料に加え、対面参加者限りの独自資料も配布するようにしております。この独自資料がとても喜ばれており、参加者とは良い関係を築けていると考えています。」
コメント:独自資料をサイトにアップしないのであれば、決算説明会に参加しない投資家にとってアクセス不能となり、公平性を欠いた対応を言わざるを得ません。決算説明会をウェブ上でも閲覧できるようにしたり、資料をサイトで共有したりして、広く公平に情報を提供するようにすべきです。

取締役D:「2025年7月に東証の企業行動規範が改正されました。当社でも、形式的で構わないのでIR担当役員やIRの専門部署・専任担当者を設置するようにしましょう。」
コメント:東証の企業行動規範の改正をキャッチアップできている点はGOODですが、「形式的で構わない」との発言は改正の趣旨を潜脱するものでありBAD発言です。「形式的」な任命で対応を終わらせず、各社が自社にふさわしいIR体制を模索すべきです。