2016/09/21 (新用語・難解用語)フィデューシャリー・デューティー(会員限定)

金融庁が昨年(2015年)9月から「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」を開催しているのは周知のとおりだが、この会議の中でよく出てくる言葉が「フィデューシャリー・デューティー」だ。

フィデューシャリー(fiduciary)は「受託者」、デュティー(duty)は義務という意味であり、フィデューシャリー・デューティーは「受託者責任」と訳される。金融庁が平成26年9月に公表した「平成26事務年度金融モニタリング基本方針(監督・検査基本方針)」の中では、フィデューシャリー・デューティーは「他者の信認を得て、一定の任務を遂行すべき者が負っている幅広い様々な役割・責任の総称」と定義されていた(3ページ参照)。この定義を踏まえると、例えば医療行為における医師もフィデューシャリー・デューティーにおける「受託者」になりえるが(委任者は患者)、フォローアップ会議でフィデューシャリー・デューティーという言葉が使われる場合には、「受託者」とは資産運用の担い手、すなわち運用会社や年金基金を指す。

運用会社や年金基金にとっての「受託者責任」とは、スチュワードシップ・コードが求める「スチュワードシップ責任」とほぼ同義と考えればよい。スチュワードシップ・コードでは、スチュワードシップ責任を「最終受益者を含む顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任」と定義しているが(1ページ冒頭の「責任ある機関投資家」の諸原則 ≪日本版スチュワードシップ・コード≫ について 参照)、これがフィデューシャリー・デューティーにあたる。既にほとんどの機関投資家(運用会社や年金基金)がスチュワードシップ・コードの受け入れを表明しているため、実質的にフィデューシャリー・デューティーも受け入れていると言える。

フィデューシャリー・デューティーが注目を集めている大きな理由が、機関投資家による「利益相反」への懸念だ。特に日本の運用会社の場合、運用会社が証券会社等の金融機関の「子会社」であることが少なくなく、利益相反が生じやすい。例えば、買収防衛策の導入議案に対し運用会社が議決権を行使する場面を想定すると、運用会社が「当該企業と取引のある証券会社の子会社」であった場合、企業から証券会社に対し、「運用会社に賛成票を投じさせるよう」圧力がかかる可能性がある。また、同じ設定で、運用会社が「当該企業を母体とする企業年金の運用委託先」であった場合、今度は企業年金から運用会社に対し、「(母体企業の)買収防衛策導入に賛成票を投じるよう」圧力がかかる恐れがある。

このような利益相反が起こるリスクは、スチュワードシップ・コードにも明記されている。スチュワードシップ・コードの指針の2-1は冒頭で「機関投資家は顧客・受益者の利益を第一として行動すべきである」という受益者の「忠実義務」について規定しつつも、同指針の後段部分では「スチュワードシップ活動を行うに当たっては、自らが所属する企業グループと顧客・受益者の双方に影響を及ぼす事項について議決権行使を行使する場合など、利益相反の発生が避けられない場合がある」と、利益相反の存在を認めている。

そのうえで、指針2-2では「機関投資家は、こうした認識の下、あらかじめ想定し得る利益相反の主な類型について、これをどのように管理するのかについての明確な方針を策定し、これを公表すべきである」とし、利益相反リスクへの対応方針について情報開示を求めている。

ただ、いくら情報開示を行ったところで、(独立系の運用会社を除いては)利益相反が起きる、あるいは「疑われる」ケースをなくすことができるわけではない。そこで、利益相反が起こり得る企業に対する議決権行使等は、独立した第三者(例えばISSのような議決権行使助言会社)に「アウトソーシング」する方法が考えられるが、これにより自動的に利益相反の問題が解決するのかと言えばそうではない。スチュワードシップ・コードの指針5-4に「機関投資家も、議決権行使助言会社の助言に形式的に依拠するのではなく、助言者の質等を具体的に検証するなど、自ら実質的な判断を行う必要」とあるように、アウトソースすれば受託者の責任がなくなるわけではないということだ。フィデューシャリー・デューティーには、上述した受益者に対する忠実義務のみならず、専門家として最善のプロセスを踏むという「注意義務」も含まれる。この注意義務には、外注先の選定や、外注後のモニタリングなども含まれる。そこまでやらなければ、フィデューシャリー・デューティーは果たせないと言えよう。

フィデューシャリー・デューティーは国内運用会社の間でも強く意識されるようになっている。例えば野村アセットマネジメントは先週(2016年9月15日)『「利益相反管理方針」の制定について』とのリリースを出し、「責任投資諮問会議」の設置により「議決権行使などのスチュワードシップ活動について、利益相反によりお客様の利益が損なわれることがないよう検証を行う」などの方針を明らかにしている。

機関投資家はフィデューシャリー・デューティーに対する意識の向上とともに、必然的にエンゲージメント活動の質・量ともに充実させようとするはずだ。「顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大」に向け、機関投資家から企業への要求も強まることになりそうだ。

2016/09/21 【ケーススタディミニテスト】店舗を新規出店したい(会員限定)

【問題1】

投資判断に際して、“投資回収期間が短い案件”イコール“将来的に収益見込みのある案件”と考えて間違いない。


正しい
間違い
【問題2】

正味現在価値法や内部利益率法で投資の採算性の計算を行う場合、割引率が高すぎると将来キャッシュフローの現在価値が高く算出されてしまう。


正しい
間違い
【問題3】

建物や土地といった不動産を賃貸借する取引が「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に該当することはない。


正しい
間違い
【問題4】

資産除去債務があれば、資産の賃貸借契約の“契約時”に多額の費用が発生する。


正しい
間違い
【問題5】

新規出店を機関決定したことがインサイダー取引における重要事実に該当する場合もある。


正しい
間違い

2016/09/21 【ケーススタディミニテスト】店舗を新規出店したい 第5問解答画面(不正解)

不正解です。
新規出店の機関決定が「新製品又は新技術の企業化を、会社の業務執行を決定する機関が決定した」場合にあたるのであれば、当該新規出店の機関決定はインサイダー取引における重要事実に該当することになります。以上より、問題文は正しいです。

ケーススタディを再確認!
「店舗を新規出店したい」の「新規出店がインサイダー取引の重要事実に該当する場合も」はこちら

2016/09/21 【ケーススタディミニテスト】店舗を新規出店したい 第5問解答画面(正解)

正解です。
新規出店の機関決定が「新製品又は新技術の企業化を、会社の業務執行を決定する機関が決定した」場合にあたるのであれば、当該新規出店の機関決定はインサイダー取引における重要事実に該当することになります。以上より、問題文は正しいです。

ケーススタディを再確認!
「店舗を新規出店したい」の「新規出店がインサイダー取引の重要事実に該当する場合も」はこちら

2016/09/21 【ケーススタディミニテスト】店舗を新規出店したい 第4問解答画面(不正解)

不正解です。
資産除去債務があれば、「契約などに基づいて店舗の閉鎖時に支払うことになる合理的な見積額」を、資産の賃貸借契約の“契約時”に「負債」として認識するとともに、当該見積額を「有形固定資産」として計上し、減価償却を通じて“各期に費用配分”していきます。“契約時に多額の費用が発生”するわけではないので、問題文は誤りです。

ケーススタディを再確認!
「店舗を新規出店したい」の「出店形態次第で異なる資金負担や会計処理」はこちら

2016/09/21 【ケーススタディミニテスト】店舗を新規出店したい 第4問解答画面(正解)

正解です。
資産除去債務があれば、「契約などに基づいて店舗の閉鎖時に支払うことになる合理的な見積額」を、資産の賃貸借契約の“契約時”に「負債」として認識するとともに、当該見積額を「有形固定資産」として計上し、減価償却を通じて“各期に費用配分”していきます。“契約時に多額の費用が発生”するわけではないので、問題文は誤りです。

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「店舗を新規出店したい」の「出店形態次第で異なる資金負担や会計処理」はこちら

2016/09/21 【ケーススタディミニテスト】店舗を新規出店したい 第3問解答画面(不正解)

不正解です。
不動産であっても、動産と同様に、その賃貸借取引が「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に該当することはあります。以上より、問題文は誤りです。

ケーススタディを再確認!
「店舗を新規出店したい」の「出店形態次第で異なる資金負担や会計処理」はこちら

2016/09/21 【ケーススタディミニテスト】店舗を新規出店したい 第3問解答画面(正解)

正解です。
不動産であっても、動産と同様に、その賃貸借取引が「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に該当することはあります。以上より、問題文は誤りです。

ケーススタディを再確認!
「店舗を新規出店したい」の「出店形態次第で異なる資金負担や会計処理」はこちら

2016/09/21 【ケーススタディミニテスト】店舗を新規出店したい 第2問解答画面(不正解)

不正解です。
投資採算性の計算方法の一つである正味現在価値法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引く際に割引率を用います。この割引率は、高すぎると将来キャッシュフローの現在価値が低くなりすぎ、低すぎると将来キャッシュフローの現在価値が高くなりすぎます。そこで担当者が計算する前に、割引率は妥当な水準かどうかを検討しておかなくてはなりません。問題文は「割引率が高すぎると将来キャッシュフローの現在価値が高く算出されてしまう」となっており、結果が逆になっています。

ケーススタディを再確認!
「店舗を新規出店したい」の「投資コストを把握し採算性を計算」はこちら

2016/09/21 【ケーススタディミニテスト】店舗を新規出店したい 第2問解答画面(正解)

正解です。
投資採算性の計算方法の一つである正味現在価値法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引く際に割引率を用います。この割引率は、高すぎると将来キャッシュフローの現在価値が低くなりすぎ、低すぎると将来キャッシュフローの現在価値が高くなりすぎます。そこで担当者が計算する前に、割引率は妥当な水準かどうかを検討しておかなくてはなりません。問題文は「割引率が高すぎると将来キャッシュフローの現在価値が高く算出されてしまう」となっており、結果が逆になっています。

ケーススタディを再確認!
「店舗を新規出店したい」の「投資コストを把握し採算性を計算」はこちら