2023年5月の課題
金融庁は2023年1月31日、昨年11月7日に公表しパブリックコメントに付していた「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」「コーポレートガバナンスに関する開示」などを盛り込んだ改正開示府令案を確定し、公布・施行しました。改正開示府令は「2023年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等」から適用されるため、3月決算企業は改正開示府令に対応した有価証券報告書の作成に追われていることでしょう。ただ、特にサステナビリティ関連情報については、サステナビリティ開示基準がない中での開示となるため、不明確な点も少なくないと思われます。今般の開示府令の改正のポイントとなる以下の開示項目について確認してみてください。
問1-1 女性活躍推進法等に基づき「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」の公表が求められる企業が、当事業年度においてはいまだ公表前である指標は、有価証券報告書においても開示する必要はないと考えてよいでしょうか? 女性活躍推進法等 : 女性活躍推進法または育児・介護休業法をいう。 |
問1-2 当グループの場合、女性活躍推進法等に基づき「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」を公表している連結子会社が100社以上あります。したがって、有価証券報告書において全ての連結子会社を開示対象とすると相当な負担となることから、提出会社と主要な連結子会社のみ開示対象とするということで問題ないでしょうか? |
問1-3 「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」の開示は、個別企業ベースのみならず、連結ベースでも必要でしょうか? |
問1-4 女性活躍推進法に基づき「男性の育児休業取得率」を開示する場合の留意点はありますか? |
問1-5 女性活躍推進法等で開示する女性管理職比率等を算定する際に使用する「従業員」と、有価証券報告書で開示する従業員の定義は同一でなければなりませんか? |
問1-6 開示対象となる提出会社及び連結子会社は、「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」の“全て”を開示しなければなりませんか? |
問2-1 「サステナビリティに関する考え方及び取組」では、特定の開示基準に基づいた具体的かつ網羅的な開示が求められるのでしょうか? |
問2-2 「サステナビリティに関する考え方及び取組」で開示すべき事項の“全て”について、任意に公表した他の書類(統合報告書等)を参照する旨を記載しても問題ありませんか? |
問2-3 「サステナビリティに関する考え方及び取組」には、有価証券報告書提出日現在の最新の情報を記載しなければなりませんか? |
問2-4 「サステナビリティに関する考え方及び取組」の開示では、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」をそれぞれ項目立し、これら4つの項目全てについて記載しなければなりませんか? ガバナンス : サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視及び管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続 |
問2-5 「ガバナンス」「リスク管理」はなぜ開示が必須なのですか? ガバナンス : サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視及び管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続 |
問2-6 改正開示府令の記載上の注意では気候変動関連情報の開示は求められていないため、開示しなくても問題ありませんか? |
問2-7 人的資本の「戦略」「指標及び目標」は、重要性が乏しい場合には記載する必要はないでしょうか? 戦略 : 短期、中期及び長期にわたり連結会社の経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組 |
問2-8 「サステナビリティに関する考え方及び取組」は、連結会社であれば連結ベースでの開示が求められるとのことですが、「指標及び目標」について連結ベースのものがない場合、開示は不要でしょうか? |
問2-9 サステナビリティ情報は「中長期」の情報であるため、多くの前提や仮定を置き、将来に関する事項を説明する必要がありますが、記載した将来情報と実際の結果が異なった場合、虚偽記載等の責任を負うことになるのでしょうか。 |
問3-1 「コーポレート・ガバナンスの概要」では、取締役会の活動状況として「具体的な検討内容」の記載が求められていますが、取締役会における議案全てを網羅しなければならないのでしょうか? |
問3-2 「監査の状況」でデュアルレポーティングラインの有無の記載が求められますが、デュアルレポーティングラインとはどのようなものですか? |
問3-3 監査役及び監査役会の活動状況の記載事項が、「主要な検討事項」から「具体的な検討内容」へと表現が変更されましたが、記載内容についても実質的な変更はあるのでしょうか? |
問3-4 政策保有株式の保有目的が、営業上の取引、業務上の提携その他これらに類する事項を目的とするものである場合には、「株式の保有状況」においてその概要の記載が求められることになりましたが、記載にあたって留意すべき点はありますか? |
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