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【特集】世界のESG投資の動向と日本企業への影響

Sustainalytics(サステイナリティクス)
リサーチプロダクト部門 セクターマネージャー
藤田裕美

Sustainalytics
 20年以上にわたり、ESGリサーチ分析の世界的リーダーとして300以上の機関投資家・金融機関に情報提供を行う。専門家・投資家が選ぶ、優れた「SRIおよびコーポレート・ガバナンス分野の独立系調査会社」に関する調査 (The IRRI Survey) で、2012年より3年連続1位に選ばれる。世界上位アセットオーナー (年金基金など) 20のうち12が顧客であり、世界上位アセットマネージャー (運用会社など) 20社のうち7社が顧客となっている。その他、Bloombergへの情報提供のほか、Channel News Asiaサステナビリティランキング評価等にも利用されている。

藤田 裕美
 リサーチプロダクト部門マネージャー。8名のアナリストから構成される運輸および重工業セクターチームのESGリサーチを統括している。また、ESGリサーチに関し顧客および企業との対話を積極的に行っており、カンファレンス等での講演も行っている。以前はDeloitte シンガポールのM&Aトランズアクションサービスにて日系企業への事業開発を担当、それ以前はCitibank の個人金融(東京)および法人金融部門(香港)にて勤務した経験をもつ。スイス University of St. GallenにてMBA修了。北海道大学法学部卒。

1.はじめに

 ESG投資とは、「環境 (Environment)、社会 (Social)、ガバナンス (Governance) に適切に配慮・対応する企業は持続的な成長が見込める」との考えの下、これまで欧米の機関投資家を中心に拡大してきた投資手法である。実際、直近2014年の統計では、ESG投資運用資産の85%以上が機関投資家の運用資産で占められている。

機関投資家 : アセットオーナーと呼ばれる公的・私的年金基金や保険会社、アセットオーナーから資産運用を受託するアセットマネージャー(運用会社)からなる。本稿では、この2つを合わせて機関投資家と呼ぶ。

 「非財務情報」とも言われるESG情報とは、地球温暖化や環境汚染、労働・雇用問題などに関する法規制への対応やリスク管理における企業の取組みや、株主、顧客、従業員、地域社会といったステークホルダーに対していかに「社会的責任」を果たしているかを示すものである。ESG情報は、財務諸表には表れないものの企業の長期的パフォーマンスに影響を及ぼす重要な指標として、従来の財務分析に加えて投資判断の際に用いられる。

 近年、このESG投資が、環境・社会問題に関心の高い投資家だけでなく、いわゆるメインストリームの機関投資家の間で拡大しており、この傾向は日本でも見てとれる。スチュワードシップ・コード(2014年2月~)とコーポレートガバナンス・コード(2015年6月~)の導入により、日本企業のESGについて、海外機関投資家からの注目が高まっている。また、世界最大の運用資産(約137兆円)を抱える年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) が2014年5月にスチュワードシップ・コードに署名、さらに2015年9月には国連責任投資原則 (UNPRI)に署名したことで、日本国内の機関投資家の間でもESG投資導入を推進する動きが出ている。

国連責任投資原則 (UNPRI) : 機関投資家の投資対象決定プロセスにおいてESGの課題を反映させ、投資対象に対してもESGについて適切な情報開示を求めるとした原則。日本では2015年10月現在、GPIFを含め23の機関投資家が署名している。UNPRIとはUnited Nations Principles for Responsible Investmentの略。

 本稿では、近年の世界におけるESG投資の動向と機関投資家が用いるESG投資戦略について説明した後、日本の上場企業のESGへの取組みの現状を踏まえて、今後日本企業がとるべき対応について述べる。

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