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【特集】後継者計画(サクセッション・プラン)の開示状況

宝印刷株式会社
ディスクロージャー研究二部研究課
新妻 大 村上勝俊 山本万里子

はじめに

コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)の補充原則4-1③は、取締役会に対し「最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)」について適切に監督を行うことを求めていますが、同原則を“コンプライ”し、後継者計画(サクセッション・プラン)を定めている東証1部・2部上場企業の割合は、2015年のCGコード施行以来、一貫して86%前後と高水準を維持しています(東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」参照。ちなみに、本稿掲載時点の最新データ(2017年7月14日時点)では86.61%)。

しかしながら、経済産業省が上場企業を対象に2016年8月25日~2016年9月30日にかけて行った「コーポレートガバナンスに関する企業アンケート調査」(2017年3月10日公表)の結果によると、回答企業数874社のうち414社(47%)が、「社長・CEOの後継者計画・監督」について、取締役会での議論が不足していると回答しています(20ぺージ参照)。また、次期社長・CEOの選定プロセスを取締役会が監督していないという企業も20%存在しています(36ページ参照)。

これに対し、経済産業省に設置されているコーポレート・ガバナンス・システム研究会(以下、「CGS研究会」)がコーポレート・ガバナンス・システム構築・運用のガイドラインとして2017年3月31日に公表した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下「CGSガイドライン」)では、後継者計画に関し「現在の我が国企業においては、取締役会の構成員の多くが社内者であり、社長・CEO に対する評価の実施や、現社長・ CEO の決めた後継者について意見を出すことは、通常は社内者には期待し難い」などとしたうえで、「社長・CEO の評価や後継者計画については、社内者とは別に客観的な立場から検証する役割が求められる」とし、社外取締役を中心とする「社外者」に、その役割とともに、取締役会の意思決定に際して独立的・客観的な視点で監督を行うことを期待するなど、日本企業に後継者計画に対する考え方の転換を求めています(23ぺージ参照 )。

こうした状況の中、現時点で日本の上場企業における後継者計画の実態を把握することは容易ではありませんが、現状の開示制度の中でも、後継者計画に関する開示を行っている企業が散見されます。

そこで本稿では、今後、後継者計画の策定・開示を検討する企業の参考となるよう、現時点で後継者計画に言及している企業の開示例や開示方法を紹介することとします。

1.CG報告書における開示(会員限定)

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