企業の経営陣であれば、「社員や顧客が自分の思い通りに行動してくれたら」と思う場面は少なからずあろう。しかし、そもそも人間は必ずしも合理的に行動するわけではない。むしろ、その人の性格や心理状態などにより、非合理的な選択をしてしまうことはしばしばある。こうした中、最近海外の有力企業では、「ナッジ」と呼ばれる行動経済学をビジネスにも応用しようという試みが広がっている。ナッジとは直訳すれば「肘で軽く突く」ということだが、行動経済学の分野では、非合理的な行動を選択した人を、合理的な行動へと方向転換させるという意味で使われる。
例えばある損害保険会社では、保険の更新を促すeメールの「件名」を検討するにあたりナッジの考え方を導入したところ、eメールの開封率が大幅に上昇したという。従来、この損害保険会社では、「自動車保険更新時期のお知らせ 早期更新で10%割引」といったどの顧客にも一律の件名のeメールを送っていたところ、開封率は33%に過ぎなかった。しかし、物事を自己中心的に考えるという人間の行動特性を利用し、件名に・・・
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