2014/11/10 ISSが2015年版議決権行使助言方針(ポリシー)を決定(会員限定)

 ISS(Institutional Shareholder Services Inc.)は11月6日、2015年版の日本向け議決権行使助言方針(ポリシー)の改定を正式決定した。これに先立ち、ISSは10月16日から28日まで日本向けポリシーの改定案に関する意見を募集していたが、今回決定した新ポリシーは、その際に出た意見を踏まえて当初の改定案を一部変更したもの。新ポリシーは2015年2月から実施される。

 以下、当初の改定案から意見募集を経て改訂が加えられた項目を中心に、重要ポリシーについて解説する。

1 資本生産性(ROE)基準の導入
 重要な変更が加えられた。改定案では「5年連続で自己資本利益率(ROE*)が5%を下回る」場合、経営トップの選任議案に反対を推奨するとしていた。新ポリシーでは、これが「過去5期の平均の自己資本利益率(ROE)が5%を下回る」に変更されている。ただし、直近年度のROEが5%以上であれば、「改善傾向にある」と判断し、たとえ上記基準に達していなくても反対推奨はしない。

* Return On Equityの略。当期純利益を自己資本で除して算定する。

 ISSはこの改訂について、「5年連続」としていた当初の改定案に対して「(1期でも基準を満たせばよいことになるため)短期主義的なアプローチを誘発するのではないか」「5期前のROEが5%以上でも、その後の業績が好ましくない場合は賛成すべきでない」という意見があったことを踏まえ、「5期平均」に変更したと説明している。また、「直近年度のROE が5%以上」であれば反対推奨しないとしたのは、「数値基準を満たさない場合でも、改善傾向があればそれを評価すべき」との意見があったためだという。

 確かに、もし当初の改定案のまま「5年連続」が採用されたとすると、1回だけ資産売却や自社株買いなどでROE5%をクリアすれば、その後の4年間は低ROEを気にする必要がなくなる。これに対し、新ポリシーのように「直近年度」とすれば、過去4期の平均ROEが5%に達しない場合には、その後は毎年5%を超え続けなければならない。継続的にROEを高める取組みを求めるという点で、新ポリシーはより厳格な内容になったと言える。

2 取締役会構成基準の厳格化
 当該項目について変更はなかった。すなわち、当初の改定案どおり「1年の猶予期間」を置いて(2016年2月から実施)、取締役会に複数名の社外取締役がいない場合は、経営トップの選任議案に反対を推奨する。社外取締役の独立性に関しては、金融庁・東証の有識者会議が現在検討している、コーポレートガバナンス・コードの内容なども踏まえたうえで決定するという。

3 監査等委員会設置会社への対応
 監査等委員会設置会社*に移行する定款変更議案に原則賛成するとしていた当初の改定案に対して、「委員会設置会社から監査等委員会設置会社への移行は個別に判断」する旨の留保が付された。委員会設置会社における指名委員会・報酬委員会の設置義務が、監査等委員会設置会社には課されていないため、コーポレートガバナンスの後退に相当しないか慎重に判断するという意図だろう。

* 2015年4月もしくは5月から施行される予定の改正会社法に盛り込まれた新たな会社形態。指名委員会、報酬委員会の設置義務がない、執行役が設置されないなど、委員会設置会社と比べると、監査役会設置会社からの移行のハードルが低いのが特徴。監査役会設置会社と委員会設置会社の中間に位置付けられる。

 また、注記により、監査等委員会設置会社と委員会設置会社については、剰余金配当の権限を取締役会に与える定款変更議案に賛成するとしている。従来のポリシーでは「原則として反対を推奨する」としつつ、委員会設置会社だけは例外扱いとしていたようだが、委員会設置会社と同様に社外取締役が義務付けられている監査等委員会設置会社の導入を受けて、賛成する旨を“明文化”したものと思われる。

 今回の新ポリシーの中で最もインパクトがあるのは、やはりROE基準の変更だろう。新ROE基準を読み替えると、「ROE5%を達成できなかった経営トップは信任できないが、過去5期の平均が5%以上ならば猶予を与える」というメッセージと解釈できる。東証一部上場会社の約7割で取締役任期が1年であることを鑑みても、直近期のROEで信任/不信任を問われるのは自然なことなのかもしれない。

 逆に言えば、組織再編や事業売却などで短期的に損失が発生し、一時的にROEが5%を下回っても、それまでの継続的な取り組みで5期平均が5%に達していれば、経営トップは一定の信任を得られることになる。今回のISS新ポリシー(改定案からの変更)をもって、機関投資家が求めるミニマム・スタンダードとしての「ROE5%」は、より厳しいながらも合理性を持った基準として定着することになりそうだ。

2014/11/10 【失敗学第6回】ベネッセホールディングス社の事例(会員限定)

概要

 株式会社ベネッセホールディングス(東証第一部。以下、“BHD”と略)の子会社・株式会社ベネッセコーポレーション(以下、“BC”と略)で約 3,504 万件の個人情報が流出した。

経緯

 BHD の個人情報漏えい事故調査委員会による調査報告書(2014年9月12日付)の概要公表までの経緯を時系列で示すと、次のとおり。
<2014年>
6月26日(木):BC の顧客のもとに通信教育事業を行う IT 事業者からのダイレクトメールが届き始めたことから、BC に対して「自分の情報が漏えいしているのではないか」といった問い合わせが急増。
6月27日(金):情報漏えいの有無についての問い合わせが急増したことについて、BC 社長小林氏および BHD 会長兼社長原田氏へ報告が行われ、BC 社長の指示により、調査が開始される。
6月28日(土):BC 社長を対策本部長とする緊急対策本部が設置され、原因究明のための調査と顧客への対応の検討に着手。調査会社に委託した調査も開始。
6月30日(月):監督官庁である経済産業省や所轄の警察署に状況の報告と今後の対応について相談を行う。
7月4日:調査会社が、BC から流出した顧客名簿を取り扱う名簿事業者を把握し、名簿を入手。
7月7日:7月4日夜から7月7日朝にかけて、入手した名簿とBC 保有のデータとをマッチングさせた結果、BC しか保有していないデータが含まれていることを確認し、顧客情報のダウンロード履歴の社内調査を開始。
7月8日:流出した顧客情報を使ってダイレクトメールや電話をかけている企業や名簿事業者に対して、名簿の利用・販売の中止を求める書簡(内容証明郵便)を発送。
7月9日:BHD が「 BC の顧客情報760万件(最大で約2,070万件)が外部に漏えいした」と公表
7月11日:スマイルゼミを運営する株式会社ジャストシステム(東証第一部)が、名簿事業者(文献社)から約257万件のデータを購入し、これを利用してダイレクトメールを送っていたことを公表
7月15日:BHD 会長兼社長原田氏の諮問機関として個人情報漏えい事故調査委員会(日弁連ガイドライン型第三者委員会ではない)を設置。警視庁に対して刑事告訴を行う。
7月17日:BC のシステム開発・運用を行っているグループ会社・株式会社シンフォームの業務委託先の元社員(以下、「M」)を逮捕。
8月7日:M が不正競争防止法違反で起訴される。
9月12日:7月22日から続いた個人情報漏えい事故調査委員会による調査が完了し、調査報告書が BHD 会長兼社長原田氏に提出される。なお、調査報告書には BHD および BC の情報セキュリティ・営業ノウハウ等の機密に係わるものが多く含まれていること、ならびに個人情報漏えいに関する公的機関の捜査等が同調査委員会による調査と併行して行われていること等から、公表に適さない事項が多く存在するとして、報告書全文は公表されず、概要をまとめたもの(以下、「調査報告書概要版」)が公表される。

 また、その後ベネッセグループでは次のような対応が行われた。
9月~10月:個人情報が漏えいした顧客にお詫びの手紙とお詫びの品(500円分の金券(電子マネーギフトまたは全国共通図書カード)を案内。500円を下記の財団法人に寄付することも選べる)
10月1日:BC において代表取締役が異動( BHD 会長兼社長原田氏が BC 社長を兼任する)。
10月31日:財団法人「ベネッセこども基金」(経済的理由や重い病気等の困難を抱える子どもの学習や進学の支援等を行う予定)を設立。
10月31日:平成27年3月期業績予想数値の修正(前回公表時には未定としていたところ、当期純損失90億~10億に修正)を公表

内容・原因・改善策

 個人情報漏えい事故調査委員会の調査報告書概要版によると、本件の主な問題点は次のとおりである。

個人情報の漏えい

内容 ・シンフォーム社の業務委託先の従業員 M が、データセンターに設置されたサーバ内のデータベースに、シンフォーム社の事業所から専用回線で接続し、業務において使用していたパソコン(以下「クライアント PC 」)にデータをダウンロードして保存。そのうえで、クライアント PC 内に保存した顧客情報を USB ケーブルで M 所有のスマートフォンに転送。Mは持ち出した顧客情報を名簿業者3社に売却。
原因 (シンフォーム社)
・シンフォーム社では、業務担当者が使用するクライアント PC から個人情報を保有するサーバへアクセスする場合に、自動的にアクセスログおよび通信ログが記録されるように設定されていた。もっとも、そのログは定期的にモニタリングされていなかった。
・クライアント PC とサーバとの間の通信量が一定の閾値*を超えた場合、データベースの管理者であるシンフォーム社の各担当部門の部長に対して、メールでアラートが送信される仕組みが採用されていた。しかし、そのアラートシステムの対象範囲の設定にミスがあり、 M がアクセスしたデータベースは対象に含まれておらず、結果的にアラートシステムは機能しなかった。
・クライアント PC には USB メモリ等の外部メディアへの書き出しを制御するシステムが採用されていた。しかし、制御システムのバージョンアップの際に、特定の新機種のスマートフォンを含む一部の外部メディアへの書き出しについては制御が機能しない状態が生じていた。
・シンフォーム社では、データベース内の個人情報を階層化しグルーピングした上で、異なるアクセス権限を設定するといった対策は講じていなかった。また、マーケティング分析といった目的に照らして、データベースの個人情報を必要にして十分な程度までに抽象化することも行われていなかった。
・シンフォーム社では、業務委託先の担当者に対する業務の分配や、付与するアクセス権限を必ずしも適切にコントロールできていなかった。

* 限界値のこと。「いきち」と読む。

(ベネッセグループ)
・情報セキュリティに関するベネッセグループ全体の統括責任者や個人情報管理の責任部門が必ずしも明確ではなかった。
・ベネッセグループには情報セキュリティについてグループ全体で統括的に管理を行う部署がなかった。
・ベネッセグループの内部監査では、高度な専門性を持つ専門家の支援を受けながら監査が実施されることはなかった。
・ベネッセグループの役職員の多くが、社内の人間が悪意を持って大量の個人情報を持ち出すことはあり得ないという意識を持っていた可能性が高かった。

改善策案 (システム)
・データベースを含むすべてのサーバとすべてのクライアント PC との間の通信を漏れなくアラートシステムの対象とするよう設定を変更。
・シンフォーム社でのシステムの本番稼働の際のチェックシートに、アラートシステムへの登録という項目を加える。
・アラートシステムの通信容量の閾値をより厳格なものに変更する。また、アラートシステムの対象として、通信容量だけではなく、通常の業務では使用しない一定の組み合わせの SQL コマンド*1の入力を基準としたもの等も含める。
・クライアント PC の仕様を外部メディアが一切接続できない仕様へと変更する。
・クライアント PC をシンクライアント方式*2にする。
・社内 PC のローカルディスクに保存された業務データの有無を自動検索するソフトを導入する。

*1 データベースを操作する際の指示

*2 サーバ側で集中的にデータ処理や保存を行い、クライアント側のPCにはデータを残さない仕組み

(監査)
・BC の委託先監査やシンフォーム社の内部監査の項目として、個人情報のあるサーバがアラートシステムの対象として適切に登録されているか否かを確認する項目を設け、定期的な監査を行う。
・シンフォーム社が、業務の委託先および再委託先を明確に把握できるように契約上の手当を行い、定期的に監査等を行う。
・情報漏えいを具体的なリスク事象として明確化した上、専門家の助力を得て内部監査を行う。
・抜き打ちで従業員のクライアント PC の操作内容を確認する。
(行動監視等)
・シンフォーム社が、個人情報を取扱う等の重要な業務を外部に委託する場合には、当該委託業務を実際に担当する者の履歴書を確認し、必要に応じて面談を実施する等、当該担当者について事前の審査を行う。
・シンフォーム社で作業に従事する者に対して、内部者の不正行為を想定した行動監視体制を構築する。
(組織体制)
・BHD に、情報セキュリティに関するグループ全体の統括責任者および部署を設置する。
・業務の全過程において、個人情報の利用・管理に責任を持つ部門(データオーナー)を定め、その権限を規程上明確にする。
・ベネッセグループにおける情報セキュリティの安全性を確認するための第三者機関を設置する。
・役職員の意識(ベネッセグループの役職員の多くが、社内の人間が悪意を持って大量の個人情報を持ち出すことはあり得ないという意識を持っていた可能性が高い)を改善する。
・データベースの管理、データベースの保守・運用、およびデータベースの利用の3つの機能を切り離し、権限・責任を明確化する。
・外部監視機関を設置する。

<この失敗から学ぶべきこと>

 BCに対して顧客リストの情報が漏えいしているのではないかといった問い合わせが急増したのが6月26日(木)でした。この日を1日目とすると、2日目日には BC 社長小林氏および BHD 会長兼社長原田氏へ報告が行われ、3日目は土曜日であるにもかかわらず、BC社長を対策本部長とする緊急対策本部が設置され、調査会社を起用した調査が開始されました。そして、監督官庁である経済産業省や所轄の警察署へ状況の報告と今後の対応について相談したのは5日目(週明けの月曜日)のことです。会社存続にかかわるリスクが経営陣に迅速に伝わり、経営陣も危機感を持って対応にあたっていることがわかります。初動のスピード感はまずまずといったところです。

 同社では、大量の顧客情報を取り扱う企業として、次のような IT 統制を含むさまざまな内部統制を構築していました。
・個人情報を取り扱う業務を行う執務室を含む施設の入館は、入館許可証の発行を受けた者または臨時入館許可証の貸与を受けた者のみが入室でき、入退室管理規程に従い、入退出等が管理されていた。また、出入口付近には、監視カメラを設置していた。
・各システムユーザーに対して、認証 ID が割り当てられていた。また、パスワードを設定し、そのパスワードは定期的に更新されていた。
・データベースへのアクセスは特定の許可されたクライアント PC に限定。クライアント PC にはネットワーク接続設定、標準ソフトウェアの搭載が行われ、各部門は、システム管理部門の許可なく標準仕様を変更することはできない。また、クライアント PC は、ワイヤーロックにより施錠されており、持出しできない。
・クライアント PC にはファイル共有ソフトなどの不要なソフトをインストールできないようになっていた。
URL フィルタリングツール*1により、外部オンラインストレージ*2等の不要な外部サービスに接続できないようになっていた。
・シンフォーム社では、社内規程上、従業員に対して企業倫理、情報セキュリティ、個人情報保護、内部者取引防止およびパソコン利用等について、定期的な教育を実施することが定められており、委託業務に従事する業務従事者に対しても、業務従事前に情報セキュリティ研修およびテストを行い、当該テストに合格した者にのみ、委託業務に従事させていた。また、業務従事者に対して、情報セキュリティ研修を毎年受講させていた。

*1 インターネット上のサイトに条件を付し、アクセス制限をかけること

*2 インターネット上のデータ保存サービス

 こういった二重三重の情報セキュリティシステムは一見堅牢に見えることから、ベネッセグループの経営陣には過信があったと言えます。しかし、実際には次のような落とし穴が待ち受けていました。

内部統制:個人情報を保有するサーバへアクセスする場合、自動的にアクセスログおよび通信ログが記録されるように設定
 ↓
問題点:ログは設定通り記録されていたものの、誰一人としてそのログをモニタリングしていなかった。

内部統制:クライアント PC とサーバとの間の通信量が一定の閾値を超えた場合、データベースの管理者であるシンフォーム社の各担当部門の部長に対して、メールでアラートが送信される仕組みが採用されていた。
 ↓
問題点:今回流出したデータベースはアラートの設定対象から漏れていた。

内部統制:クライアント PC には USB メモリ等の外部メディアへの書き出しを制御するシステムが採用されていた。
 ↓
問題点:制御システムのバージョンアップの際に、特定の新機種のスマートフォンを含む一部の外部メディアへの書き出しについては制御が機能しない状態が生じていた。

内部統制:プライバシーマークを取得していた。
 ↓
問題点:上記欠陥があったことは把握できなかった。

 まさに、「仏作って魂入れず」の典型例と言えます。内部統制を整備しただけで満足することなく、運用状況が十分であるかを確認したり、システムを更新したときに新たなセキュリティホールが生じていないかを専門業者の力を借りて調査したり、組織変更に伴い責任部署や責任者を任命し直したりして、内部統制をベストの状態に保ち続ける必要があります。内部統制を「整備」しただけで慢心せず、「運用」に問題がないか目を光らせ続けなければなりません。

 また、ベネッセグループにおける顧客データベースへのアクセスの主目的はマーケティング分析であることを考慮すると、次のような統制を実施すべきでした。
・データベース内の個人情報を階層化しグルーピングした上で、異なるアクセス権限を設定する(例えば、クレジット情報にアクセスできる権限を有するのは上位の管理者のみとする等)。
・マーケティング分析といった目的に照らして、データベースの個人情報を必要にして十分な程度までに抽象化しておく(例えば、ダイレクトメール用のデータベースとマーケティング分析用のデータベースを別に管理して、マーケティング分析用のデータベースでは氏名をイニシャルのみにしたり、住所を市町村名までの表示に留め、丁目や番地を入れなくしたりする)。

 ベネッセグループでは、個人情報がビジネスの推進力となっていることから、その管理には万全を尽くすべきでした。「強み」と「弱み」は表裏の関係にあることを痛感する事件であったと言えます。

 同社のお詫び金額は1人当たり500円でした。個人情報漏えい時のお詫び料としては相場相応として定着した感があります。もっとも、500円分の金券(電子マネーギフトまたは全国共通図書カード)を受け取ることに加え、同時に設立した財団法人ベネッセこども基金に対して寄付することを選べるようにした点については、「被害者に寄付を募るとは何事か」として反感を持った被害者(顧客)が少なくありませんでした。事後処理のまずさは顧客のロイヤリティを下げることになります。お詫びと基金拠出は切り分けて、基金はベネッセグループが全額を負担するようにした方が、顧客のロイヤリティを維持できたのではないかと思われます。「初動のまずまず感」と比較すると、「残念」な事後処理になってしまいました。

2014/11/07 株式投資信託を所有する企業のキャッシュ流出が増加も

 株式投資信託を購入している企業は少なくないだろう。こうした企業は、来年度以降、・・・

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2014/11/07 株式投資信託を所有する企業のキャッシュ流出が増加も(会員限定)

 株式投資信託を購入している企業は少なくないだろう。こうした企業は、来年度以降、税金の負担が増えることになりそうだ。

 現行の法人税法では、株式投資信託の配当(=収益分配額)は、運用形態に応じて、その1/2の50%、あるいは1/4の50%を「益金」に算入しなくてよいことになっている。益金に算入しなくてよいということは、要するに税金がかからないということだ。

 ところが、来月12月中旬にもその全容が判明する平成27年度税制改正により、株式投資信託の配当は益金不算入とはできなくなる可能性が極めて高いことが当フォーラムの取材でわかった。

 2014年8月27日のニュース「税制改正きっかけに子会社や投資先の持株比率引上げも」でお伝えしたとおり、政府は現在、法人実効税率*引下げの財源として、受取配当課税の改正(課税強化)を検討しているが、この改正の背景には、他社の「支配」を目的として株式を保有した結果得た配当と、「運用」を目的として株式を保有した結果得た配当では課税関係が違ってしかるべきでは、という考え方がある。つまり、「運用」を目的に株式を保有する場合までその配当を益金不算入とする必要はない、ということだ。

* 法人税、事業税、住民税といった会社の利益に課税される税の総合的な負担率のこと

 この点からすると、株式投資信託はまさに「運用」を目的として保有するものであることから、その配当は益金不算入とされる可能性が高いということにならざるを得ない。具体的には、上述した「配当の1/2の50%」「配当の1/4の50%」といった益金不算入は一切認められなくなり、配当の全額を益金に「算入」することが求められることになりそうだ。

2014/11/06 (新用語・難解用語)マーケティング・リテラシー

 マーケティングというと、アンケート調査や各種のデータ分析(性別や年齢、居住地、職業による購買の傾向など)などのマーケティング・リサーチを思い浮かべる向きも多いだろう。特に最近では、従来は無理だったビッグデータの解析・活用が可能となってきたことで、多くの企業が消費者の嗜好や行動を調査したり分析したりすることに益々力を注ぐようになっている。

 実際、新商品や新しいサービスの開発・販売に先立ち、経営陣はマーケティング担当者等にこうしたマーケティング・リサーチを求め、その結果を踏まえて、新商品やサービスの開発・販売開始の意思決定を行うことも少なくない。

 確かに、マーケティング・リサーチは消費者のニーズを把握するうえで一定の効果があるが、いくらマーケティング・リサーチを一生懸命やっても、それだけでヒット商品を生み出せるとは限らないのが現実。それどころか、マーケティング・リサーチの結果に沿って商品・サービスを開発したのに、全く売れなかったということも珍しくない。

 その大きな理由の1つとして、・・・

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2014/11/06 (新用語・難解用語)マーケティング・リテラシー(会員限定)

 マーケティングというと、アンケート調査や各種のデータ分析(性別や年齢、居住地、職業による購買の傾向など)などのマーケティング・リサーチを思い浮かべる向きも多いだろう。特に最近では、従来は無理だったビッグデータの解析・活用が可能となってきたことで、多くの企業が消費者の嗜好や行動を調査したり分析したりすることに益々力を注ぐようになっている。

 実際、新商品や新しいサービスの開発・販売に先立ち、経営陣はマーケティング担当者等にこうしたマーケティング・リサーチを求め、その結果を踏まえて、新商品やサービスの開発・販売開始の意思決定を行うことも少なくない。

 確かに、マーケティング・リサーチは消費者のニーズを把握するうえで一定の効果があるが、いくらマーケティング・リサーチを一生懸命やっても、それだけでヒット商品を生み出せるとは限らないのが現実。それどころか、マーケティング・リサーチの結果に沿って商品・サービスを開発したのに、全く売れなかったということも珍しくない。

 その大きな理由の1つとして、消費行動とは結局は人間の“心”の問題であるということが挙げられる。

 消費者へのアンケート結果を盲信する経営陣がいるが、そもそもアンケート結果が消費者の本当の気持ちや感想を表わしているのかどうか大いに疑わしい。自分がアンケートに回答する時のことを思い起こして欲しい。用紙に書かれた質問項目に対し、真面目に答えている人がどれだけいるだろうか。わずかな時間の中で、適当に回答していることも多いはずだ。その結果を基にしてヒット商品を作れるはずがない。アンケートには「面接法」という手法もあるが、対面であるがゆえ羞恥心などが働き、かえって嘘をついてしまうということもある。マーケティング・リサーチ(特にアンケート)の結果は、あくまで参考程度にとどめておいた方が無難だろう。

 では、ヒット商品・サービスを開発するためには何が必要だろうか。それが「マーケティング・リテラシー」である。マーケティング・リテラシーの定義は人によって異なるが、要するに「消費者の心を洞察する能力」と言える。

 マーケティング・リサーチが対象としているのは消費者が“過去”にとった行動に過ぎない。仮にアンケートで「こういう商品が出たら買いますか?」と消費者に聞いてみたところで、「その時になってみないと分からない」というのが本当のところだろう。実際、「そんなもの売れるわけない」と言われていたものが大ヒットしている例は少なからず存在する。消費者は、自分がそれを求めているのかどうか、心の中にある潜在的なニーズにまで気付くことはできないのだ。

 こうした中で、これまで世になかったヒット商品を生み出すためには、消費者の心理を鋭く洞察するマーケティング・リテラシーが欠かせない。それは座学では身に付けられないものであり、その人の性格、体験、そして何よりも既存のデータや前提に拘泥しない柔軟性に大きく左右される。

 リサーチのテクニックに優れた人材がヒットメーカーではない。経営陣は、マーケティング・リテラシーの高い人材が集まり、育ち、また自由にモノを言える社風を醸成することが、会社にブレイクスルーをもたらすということを認識すべきだろう。

 最後に、かのスティーブ・ジョブスが残した言葉を記したい。

People don’t know what they want until you show it to them. That’s why I never rely on market research. Our task is to read things that are not yet on the page.

(人々は実際にそれを見せられるまで、自分が何を欲しいかなんて分からない。だから、私は決して市場調査には頼らない。我々の仕事は、まだページに書かれていないことを読み取ることだ。)

2014/11/05 いずれ日本にも?機関投資家による議決権行使内容の事前開示の波

 機関投資家に対する評判は機関投資家によって様々だが、良識的な株主行動で名高いのが、ノルウェー政府系ファンドの資産運用部門である「ノルゲスバンク・インベストメント・マネジメント」だ。同ファンドがある企業をポートフォリオから外すとその理由に注目が集まるなど、同ファンドは他の機関投資家に大きな影響力を持つ。また、同ファンドは投資先企業に対して積極的に関与することでも知られる。最近では、ゴールドマン・サックスやバーバリーの役員報酬議案や、JPモルガンのCEO兼取締役会議長の再任議案に反対票を投じ話題を呼んだ。

 そのノルゲスバンク・インベストメント・マネジメントは、来年から投資先企業の個々の株主総会議案に対する議決権行使内容を事前に開示する方針を明らかにしている。当面は一部の投資先に限るが、将来的は全投資先を事前開示の対象にするという。議決権行使内容の事前開示は、同ファンド以外でも、既に全米1、2位の公的年金基金「Calpers(カリフォルニア州職員退職年金基金)」「Calstrs(米カリフォルニア州教職員退職年金基金)」が行っているが(ただし、株主総会直前の開示)、これには賛否両論がある。

 事前開示といっても株主総会の直前のタイミングで開示するのではガバナンス効果は薄いとし、「行使内容が決定次第、すぐにそれを開示すべき」とするアグレッシブな意見もある一方で、議決権行使の内容は“株主総会直前”の状況で判断すべきであり、投資家としては、企業との対話などの結果によって行使内容を変更するオプションを自ら放棄すべきではないとする意見もある。

 どちらの意見にも一理あると言えるが、1つの事実として、・・・

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2014/11/05 いずれ日本にも?機関投資家による議決権行使内容の事前開示の波(会員限定)

 機関投資家に対する評判は機関投資家によって様々だが、良識的な株主行動で名高いのが、ノルウェー政府系ファンドの資産運用部門である「ノルゲスバンク・インベストメント・マネジメント」だ。同ファンドがある企業をポートフォリオから外すとその理由に注目が集まるなど、同ファンドは他の機関投資家に大きな影響力を持つ。また、同ファンドは投資先企業に対して積極的に関与することでも知られる。最近では、ゴールドマン・サックスやバーバリーの役員報酬議案や、JPモルガンのCEO兼取締役会議長の再任議案に反対票を投じ話題を呼んだ。

 そのノルゲスバンク・インベストメント・マネジメントは、来年から投資先企業の個々の株主総会議案に対する議決権行使内容を事前に開示する方針を明らかにしている。当面は一部の投資先に限るが、将来的は全投資先を事前開示の対象にするという。議決権行使内容の事前開示は、同ファンド以外でも、既に全米1、2位の公的年金基金「Calpers(カリフォルニア州職員退職年金基金)」「Calstrs(米カリフォルニア州教職員退職年金基金)」が行っているが(ただし、株主総会直前の開示)、これには賛否両論がある。

 事前開示といっても株主総会の直前のタイミングで開示するのではガバナンス効果は薄いとし、「行使内容が決定次第、すぐにそれを開示すべき」とするアグレッシブな意見もある一方で、議決権行使の内容は“株主総会直前”の状況で判断すべきであり、投資家としては、企業との対話などの結果によって行使内容を変更するオプションを自ら放棄すべきではないとする意見もある。

 どちらの意見にも一理あると言えるが、1つの事実として、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が会長兼CEOを務める世界最大の投資持株会社「バークシャー・ハザウェイ」が、コカ・コーラの役員報酬方針に対して当初は反対するスタンスを示しながらも、結局反対票を投じなかったことに対して、米国内では「株主責任を果たしていない」との厳しい批判が巻き起こっているという点には留意すべきだろう。

 上述したノルゲスバンク・インベストメント・マネジメントは現在8,000社以上に出資しているが、出資先企業への影響力を拡大するため、出資比率5%以上の投資先を現在の45社から100社に増やすという。同ファンドの株主行動は世界各国の機関投資家が参考にしていることから、議決権行使内容の事前開示の波は、いずれ日本にも押し寄せることになるかもしれない。

2014/11/05 【2014年10月の課題】女性登用の推進:解答(会員限定)

政府が進める女性活躍推進策の現状

 「女性の活躍推進」は、安倍政権が2014年6月24日に閣議決定した「日本再興戦略 改訂2014」における「改革に向けての10の挑戦」の1つであり、そこでは、女性の登用を促進するための“環境整備”として、以下の3つを挙げています。

(1)有価証券報告書における役員の女性比率の記載義務付け(2014年度内に実施)
(2)コーポレート・ガバナンスに関する報告書に、役員・管理職への女性登用状況や登用促進に向けた取組みを記載するよう各金融取引所に要請(2014年度内に実施)
(3)女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築(2014年度中に結論を得て、国会提出)

 このうち既に実現しているのは、(1)の「有価証券報告書における役員の女性比率の記載義務付け」です(2014年10月23日に金融庁から内閣府令が公布されています)。こちらは、2015年3月決算会社の有価証券報告書から義務付けられます。

 (3)の「女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組み」については、女性活躍推進法案(2014年9月29日のニュース「“女性活躍法”で公表が求められる項目は?」参照)が2014年秋の臨時国会に提出されたものの、衆議院の解散に伴い、廃案となっています。ただ、同法案は来年の通常国会に再提出され、成立を図ることになるでしょう。同法のうち企業に作成を求める「自主行動計画」の部分は、平成28年4月1日から施行される見込みです。

 一方、(2)の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書への記載」については、現在のところ話が進んでいない状況です。(1)の有価証券報告書への記載義務付けが実現したことから、こちらは立ち消えになるかも知れません。

 いずれにせよ、これらの施策により、各企業における女性の活躍状況がオープンになり、他社との比較も容易になります。就職や転職を考える女性にとって、企業が開示する女性の活躍状況は、就・転職先を選ぶうえで重要な指標の1つになるはずです。したがって、優秀な人材を集めたい企業としては、積極的な開示を通じて、女性の活躍に対する取組みをアピールしていく必要があります。

女性が活躍できる会社とは?

 ただし、数値目標の達成を目指すだけでは不十分です。真の意味で「女性が活躍できる会社」になるためには、以下のような課題をクリアする必要があります。

1 納得感の高い評価制度
 女性の管理職比率等について数値目標を設定し、これをクリアするために女性を積極的に登用することは、スピーディに改革を実現するうえで効果があるとされ、多くの企業で採用されています。

 一方で、数値目標を設定することに対しては、批判的な意見も少なくありません。これは、実際に仕事で成果を上げている実力のある女性が昇進した場合でも、周囲から「下駄を履かせたのでは」といった目で見られがちなため、優秀な女性のモチベーションがかえって低下してしまう恐れがあるからです。

 したがって、女性管理職比率を高めるために数値目標を導入しようという場合には、数字が独り歩きしないよう、必ず「納得感の高い評価制度」の伴った運用を行うことが必須となります。

2 ロールモデル(模範)の存在
 優秀な女性が自社に魅力を感じてくれるよう、「ロールモデル」を設定することがよくあります。確かに、こうしたロールモデルを会社案内や会社説明会に登場させ、これまでの自分の活躍ぶりを語ってもらえば、入社を検討している者は「入社後の自分」をイメージしやすいでしょう。

 ただし、最近の女性が理想とする「ロールモデル」はかなり変容してきている点には注意が必要です。これまで活躍してきた女性は、男性並みか男性以上の能力と仕事をこなしてきた傾向が強く、私生活を犠牲にして仕事に全力を傾けてきた人も少なくありません。しかし、最近は、仕事と私生活の両方を大事にしたいと考える女性が増えており、いわゆる“バリキャリ*型”の女性をロールモデルとすることは、今時の女性の感覚にはフィットしないと思われます。

* バリバリのキャリアウーマンの略。

 むしろ、しなやかなで女性らしく生きながら、仕事でも自己実現できることが、多くの女性にとって理想となりつつあります。そのようなロールモデルが社内に多数存在していると、求職者も「私もあの人のように生きたい」と感じ、貴社に魅力を感じるはずです。

3 ライフサイクルに合わせた働き方の実現
 日本企業の労働時間の長さは周知のとおりですが、この長時間労働が働き方の基本である限り、女性のキャリア継続は難しいでしょう。女性が長期的なキャリアを築くためには、長時間労働の是正、労働生産性・効率性をあげるための工夫・評価体系の整備が必要です。女性の活躍を促進するためには、まずは男性を含む全社的な働き方を見直す時期にきていると言えます。

 とりわけ女性の働き方としては、ライフサイクルに合わせた多様かつ柔軟な選択肢を示すことが必要です。具体的には、地域限定、短時間勤務、隔日勤務、在宅勤務等があります。また、これらを選択したことが昇格要件で不利にならないような配慮が必要です。さらに出産・育児が一段落したあかつきには、男性社員と同様に「無限定社員*」として活躍できるルートに戻れる仕組みを整備する必要があります。

* 仕事内容や勤務地、労働時間などがが限定されない正社員のこと。逆に、限定される正社員を限定社員(あるいは限定正社員)と呼ぶ。

4 意識改革
 女性を上手く活用できている企業は、経営トップ主導で改革を行ったケースが目立ちます。これまで長きに渡って「企業風土」として全社員に染み付いた思想を、草の根運動だけで変えることは期待できません。経営トップが、自社にとって女性の活躍が必要であることやその効果について、自らの口でメッセージとして伝え、具体的な経営戦略に反映させていくことが重要です。

5 ダイバーシティ
 性別の特徴を最大限に活かした人員配置等の人事政策により、男性社員と女性社員がお互いに刺激しあい、その結果としてイノベーションが生まれていく環境を作っていくことが重要です。同じような思想・発想を持った人を集めるのではなく、多様性(ダイバーシティ)のある人材構成とし、社員がお互いに影響し合うことにより、事業環境の変化に対する耐性が高まり、逆境にも柔軟に対応できる強い組織が作られます。

 もっとも、女性の活用を推進する企業からは、「管理職になりたがらない女性が多い」という悩みをしばしば耳にします(最近は男性もなりたがらないようですが)。すべての女性に管理職のポストを目指させる必要はありませんが、少なくとも、昇格により本人の仕事の幅や裁量の自由度が広がることの効果・達成感の大きさを認識させたうえで、主体的に自分のキャリアパスを選択できる仕組みと情報は提供すべきです。また、性別にかかわらず、社員が早い段階で自立できる育成体制を整備し、そこから先は本人が多様な選択肢の中から働き方・生き方を選べるような環境を整備することが、結果的に女性管理職の誕生を促すことになるでしょう。